慢性疾患とうつの関係  


数年前から今年にかけて、慢性疾患とうつ病の関係を研究した論文がたくさん発表されました。いろんな心理テストを用いて、病気の人と一般の人との成績を比べた内容です。糖尿病は、病気までいかなくても、患者さんを憂鬱な気分にさせる傾向はあるようです。  


もちろん糖尿病の方が必ずうつ病になるはずはありませんし、病気はあっても積極的に対処されて、治療も仕事も頑張っている方のほうが多いくらいです。病気がある方とない人を比較して、心理テストの結果に少し差があったというだけに過ぎません。  


慢性疾患は精神面に影響します。 病気を持つと心配のタネになりますし、私のような者が「タバコと酒はダメです。」などと深刻な顔で言うので、楽しいはずがありません。私の顔で病気になりそうです。それでなくても、ご馳走を前にして「これを食べたらコントロールが悪化する。」「何カロリーだろうか?」などと考え出したら、食べた気持ちになりません。しまいには「自分は何のために生きてるの?」と、悲劇の主人公の気持ちにさえなりそうです。


逆に、精神的病気の患者さんは、血糖値やコレステロールのコントロールがつきにくい傾向もあります。やはり活動性が違いますので、食事療法や運動療法に限界があるためかも知れません。運動療法によって、精神の状態が改善したとする報告もありますが、常識として以前から言われている「気分転換の効果」が、これに当たるのかも知れません。     


また、ストレスがかかると糖尿病患者さんの血糖値が上がる傾向があります。ストレス発散のために酒を飲むと、これまた確実に血糖値を上げます。どうしたら良いのか悩むと、またストレスになって・・・悪循環です。    


簡単な解決策はありませんが、治療に必要なことを迷わずできれば、クヨクヨ考え続ける時間が減り、精神的には良い効果をもたらします。やるべきと思うことをやれば、それ自体が治療になりますし、自信や自負にもつながります。将来への不安や、病気が悪化するなど心配ばかりしていても仕方ありませんので、とりあえず現状に感謝し、自分に求められていることに集中すべきでしょう。宗教や精神科のカウンセリングは、教義の内容は様々でも、このようなことを指導する意味があるようです。


徳の高い聖人と違って我々の理解力、精神力には限界があります。すぐに納得して迷いなく行動するのは難しいことではありますが、もし必要な行動ができれば、不安感に押しつぶされそうになっても耐えられるはずです。





平成21年9月30日 診療所便りより





黙々と人生を歩むべし