昨年秋くらいから診療所の近くでタヌキの姿を見かけるようになりました。
以前は家族づれだったのか、数匹並んで移動している姿もよく見ましたが、数年前から感染症のせいか、数が減っていたようです。見かけたタヌキ氏も、遠方から引っ越して来られたのかも知れません。
タヌキが住める環境ということは、壷川地区は自然豊かで良い所と言えるでしょう。
中耳炎の治療法(抗生物質)
小児の中耳炎の治療に関する発表がありました(N Engl J Med 2011; 364:105-115 116-126)。その中で、抗生物質を使うと自覚症状が軽いことが明らかになり、抗生剤の意義が証明されました。
中耳炎に対する抗生物質の使用は意味が曖昧で、欧米では使わないのが一般的と言われています。ところが日本では昔から必ず使われる傾向があり、私は根拠に疑問を感じていました。感染症=抗生物質で治療という先入観をそのまま診療に持ち込んでいるのではと、疑っていました。でも、抗生物質の使用は必ずしも間違いではなかったようです。 今まで処方を遠慮していましたが、今後は処方しても道義的に問題ないようです。
ただし発表されたのは外国の研究ですので、単純に日本に置き換えて解釈はできません。 日本でよく使われるメイアクト、フロモックス(いずれも商品名)は統計では使われていませんので、日本で調べれば結果は全く違ったものになる可能性もあります。 日本での統計は?と思って探しても、客観性に疑問のある統計が多いため、どこまで信用してよいのか判断に困ります。
また今回の発表でも、数日間の自覚症状を除き、重症度や後遺症に関しては使う使わないで差がないので、脱水などに注意して数日間を乗り切れば使わなくて構わないとも言えます。 鼓膜や全身の状態で個別に判断すべきでしょう。
抗生物質を使うと半数の人に副作用が出ますし、必ず耐性菌が生じるはずですので、副作用のほうが問題かもしれません。 中耳炎の子供が老人の見舞いをしたら耐性菌が拡がるのを覚悟しないといけませんが、おそらく老人が肺炎を起こされた時には相当やっかいなことになります。 結果的に老人の生死に、子供が持ち込んだ菌が関係するかもしれません。
今回の発表は、「たぶん中耳炎だろう。」程度の考えで直ぐに抗生物質を使うべきという意味ではないと思います。 私の個人的な印象で非常に失礼な言い方ですが、今回の発表が出る前、小児科や耳鼻科の先生のほとんどが経験的な感覚で診療し、根拠を確認することなく処方されていたのでは?と疑います。 実際に抗生物質なしで経過を見るように勧めると、感染症に抗生物質は必須という一般のイメージのせいで親から激しく怒られますので、面倒を避けるために意義など無視して処方せざるをえなかったのかも知れません。
今の時点で中耳炎になったら 後のことはともかく数日でも楽にしたい家庭では抗生物質の処方を受けるべきでしょう。 必ず有効とは限らず、しかも半数の人に害はありますが、ほとんどは対処できるからです。使わなくても、多くは後遺症なく治癒しますが、鼓膜の状態を確認したほうが良いでしょう。よく解らないから医者の勝手に任せるという考え方では、医者が根拠なしで使っていた場合、後で後悔することになるかも知れません。
(2011.08.31up)

