腸内細菌と病気
腸内細菌は病気と関係すると言われています。注目度が上がったことで、内科学会雑誌平成27年1月号の特集は腸内細菌と病気の関係を解説していました。
それによると細菌が出す物質に、腸の粘膜や免疫細胞などが反応し、代謝や免疫の状態が変化するため病気と関係してくるそうです。意外な治療法に利用されるし、様々な病気にも影響しているようです。
腸の病気である潰瘍性大腸炎は、原因がよく判っていない慢性の炎症性疾患です。この病気に対し、腸内の菌を患者さんに移植することで病状が改善する傾向があり、各国で治療が試されています。
腸内細菌叢を詳しく調べると、患者さんに独特のパターンがあったことから、菌の状態を変えることで病態が変わるのではと考えた方がおられたようです。 実際には病状が改善しない場合もあるらしく、標準治療になったとは言えませんが、施設によっては非常に高い有効性が発表されています。
偽膜性腸炎という病気もあります。抗生物質を使った患者さんに見かける病態で、耐性菌が増えて炎症を起こす病気です。抗生物質の効果が限られるので、治療が難しいことがあります。治りにくくなった患者さんに、健常者の菌を移植すると、やはり有効な場合があるそうです。
その他、腸以外の病気にも関係があります。糖尿病の発症、動脈硬化の進展などに関係する?といわれると不思議な印象も受けますが、炎症性の物質を出す菌が増えると、代謝や動脈硬化に影響される場合もあるようです。
これらの問題に関し、今の時点では治療効果を計算できるほどは知見が集まっていないようです。例えば特定の乳酸菌を飲めば腸の病気にならない、癌や糖尿病にならないといった方法は判っていません。
口から乳酸菌を摂取しても胃で殺菌され、腸までたどり着く量は限られています。目標の場所に移動して継続的に存続してくれるか、その判定、管理は難しいでしょう。腸内細菌には人間の食事や睡眠、運動、ストレスの状態も大きく影響すると思います。良い菌を飲めば効くとは限りません。
乳酸菌飲料はさかんに宣伝されておりますが、それに踊らされるべきではありません。でも、バランスの良い食事や規則正しい生活習慣は常識として必要で、その結果として腸内細菌の情況も改善するなら、悪いことではありません。
御自分で納得して治療意欲を生むために、腸を意識するのは良いことです。よく判っていないとしても意識するのは大事と思います。
診療所便り 平成27年2月分より・・・・(2015.03.31up)