爪白癬の治療
温泉や銭湯の足拭き用のマットには、全てではないとしてもかなりの確率で水虫の菌がいると思われます。菌がいれば必ず感染するわけではありませんが、温泉に行くと私もよくもらいます。同じように、ご家庭で誰かが水虫を持っていたら、お風呂のマットには菌がいる可能性があります。マットの交換、日光消毒は頻回にされたほうがいいでしょう。もちろん、洗ったり日光消毒するだけで菌が完全に死滅して感染の危険がなくなるとは言えませんが、感染の機会を減らす意味はあると思います。
爪に水虫の菌が入った時は、爪が白くなって厚みを増し、ポロポロともろくなる傾向がありますので、見た目で気がつくことが多いと思います。多くの場合は、足指の爪の先が厚ぼったくなり、徐々に爪の中にまで伸展し、爪全体が変形していきますが、形はそれほど変化せず色が黒くなるだけの人もいらっしゃいます。ひどい場合は爪全体がポロッと取れてしまいます。
爪水虫の治療をするかどうか判断するためには、水虫を放置した場合の害と、治療することによる利益、治療に要する費用、治療の害などを秤にかけて考えなければなりません。
放置した場合の害の第一は、家族にうつしてしまうことです。そして、爪や指の間から二次的にバイキンがついて感染症を起こす原因になることもありえます。爪が傷んで、剥がれてしまうと非常に痛いことも害のひとつです。
近年は爪水虫の治療法が確立してきましたが、そもそも治療すべきかの判断が難しい人もいます。もちろん可能なら治療したほうが良いのですが、治療が数ヶ月かかり薬の値段も高いので、絶対成功させるという覚悟が必要です。マットや靴、カーペットなども全部交換し、家族全員治療するくらい徹底しないと、一回菌が消えても再度感染する可能性があります。
1日1回の錠剤を半年間飲む方法と、カプセルを1週間飲んで3週間休薬することを繰り返す2種類の方法があります。いずれの薬も値段が高く、しかも副作用が出る確率は低くありません。
薬がまったく効かない患者さんは経験ありませんが、効くけれど再発する方が結構多いように思います。これは、多くの場合は菌が少し残っていたためかもしれませんが、マットなどによる再感染も原因ではないかと思います。
最近はホームセンター等に足の指が一本一本分けられた靴下が出回っていますが、もしかすると足指の間の水虫は、これでかなりコントロールできるかも知れないと思います。医学的データは見たことはありませんが、私が水虫をもらう時は、決まって足指がくっついた箇所に起こりますので、指が離れた状態を保てば激しい病巣を作るのを予防できるかも知れません。
診療所便りより 平成20年6月