新年明けましておめでとうございます。当院は昨年から職員が増え、受付の椎葉と山下、看護師の簑田と今田、院長の橋本の5人で診療しています。   
今年の当院の目標は今までの継続ではありますが、よりチェックの効いた確実な処置、処方の提供です。処方薬の確認は5回も繰り返しています。幸い今まで大きな事故は起こしていませんが、事故防止の努力は怠れません。本年もよろしくお願いします。     


 甲状腺腫瘍の治療指針        

甲状腺には、よく腫瘍が発生します。エコー検査すると全くない人は少なく、年齢が上がると必ずのようにあります。実は私にも小さな腫瘍があって、時々検査しています。

腫瘍をどう管理すべきかの方針は曖昧でした。基準がないので、私自身も対応を聞かれて困ることが少なくありません。 甲状腺癌に関する論文は、なぜか主要な医学雑誌に掲載されることが少なめです。多数の施設が集まって治療法による経過の違いを検討できれば発表もできるのでしょうが、個人的に思うに以前から欧州とアメリカの意見が合致しない傾向や、新しい薬の開発に関係しない分野なので大きな資金が集まらず、統計も小規模に留まる傾向がある、原発事故のようなエポックがないと注目度に欠けるといった事情があったのかもしれません。   

近年は学会の一部から指標が出ていますが、自己流で対処する施設が多いのが現状です。甲状腺癌は、かかっても生存期間が長いので、適当な治療をしても失敗が解りにくく、非難されないからではないかと思います。

例えば腫瘍に対して、甲状腺ホルモン剤を処方して経過を見る施設もあります。ホルモンを加えると、良性の腫瘍の場合は小さくなる傾向がありますので、意味があるかどうかは解らなくても効いたと感じることはできます。 ただし、一部に癌があっても全体としては腫瘍が小さくなるように見えてしまうので、癌の治療を遅らせる可能性もあり、私としてはお勧めできません。 

薬を出されるのは、出さないと患者さんが勘違いされて、「検査も必要ないのだろう。」と思われ、検査に来なくなる心情的傾向を考えてかもしれませんが、実は病院の収益を考えての行為かも知れず、もしそうなら問題です。     

甲状腺腫瘍は発生頻度が高いので、治療や検査のやり過ぎは医療費の問題も生じます。 受診するたびに血液検査と画像診断を要するのは、本当に限られたケースだけで、過剰に費用を請求されているケースが多いのではと個人的には感じます。 指針に沿った管理が望ましいと思います。    


診療所便り 平成25年1月より  (2013.01.31up)