点滴 


点滴の意味は難しく、本当は誰も理解できていないのかも知れません。通常の目的は水分や糖分、ミネラルなどを直接血管に入れて、飲むよりスムーズに、的確な量を投入することにあります。いっぽうで、心不全や代謝性アシドーシス等を起こす危険性もないわけではありませんので、脱水が激しい時、点滴以外で効果が期待できない時に限ってすべきです。


本当に具合が悪くなって点滴を必要とする時に、血管が確保しにくくて困ることがあります。静脈に針やチューブを入れると、そこには炎症を起こします。すると、大事な時に血管が探せなくて困りますので、採血も点滴も必要最小限にしたほうがいいと思います。ただし、暑い時などに我慢していると危険ですので、体調が悪い時には受けることも考えてみるべきです。


点滴バッグの内容、点滴液の種類について、おおまかに説明します。


分類

商品名

特徴

適応

リンゲル系(細胞外液型)

ヴィーンF、ソリューゲンD、ソルラクト、ラクテック、ラクトリンゲル等

Naイオン濃度が高め、Kイオン濃度が低め、

循環血液量が減少した時

維持液

ソリタT3、ソルデム3、KN3号、フルクトラクト、アクチット等

Kイオン濃度が高め、Naイオン濃度が低め

経口摂取が困難な時の点滴の基礎液

アミノ酸製剤

プラスアミノ、アミゼットなど

アミノ酸を含む

低栄養、低蛋白血症

アミノ酸、糖、電解質製剤

アミカリック、アミノフリード、ビーフリード等

アミノ酸、糖、ミネラルを含む

低栄養、低蛋白血症

中心静脈用輸液剤

ネオパレン、フルカリック、トリパレン、ハイカリック、アミノトリパ、ピーエヌツイン、ユニカリック等

高カロリー、アミノ酸や糖分、ミネラルなどを含む

中心静脈(心臓に近い静脈)からの点滴

総合アミノ酸製剤

アミパレン輸液、プロテアミン12注射液など

アミノ酸を含む

中心静脈(心臓に近い静脈)からの点滴

肝不全用アミノ酸製剤

アミノレバン、モリヘパミンなど

肝性脳症用のアミノ酸

肝性脳症

腎不全用アミノ酸製剤

キドミン、ネオアミュー

腎障害用のアミノ酸製剤

腎不全時の低蛋白血症の改善

ビタミン製剤

ソービタ、MVIなど

総合ビタミン剤

中心静脈(心臓に近い静脈)からの点滴



細胞外液型(リンゲル系)
血清に近い割合でミネラルを調整してあります。血液を補うのに近い状況、例えば血圧が下がった時、脱水の時、嘔吐の場合のように、ナトリウムやクロール中心にミネラルが失われた時には良い適応になります。緊急の時には、この種の点滴でないといけません。  
でも実際は血管の中だけに止まって血圧を維持してくれるわけではなく、5割くらいは細胞の中にすぐ移行して浮腫みの原因になることもあります。
極端なナトリウム不足の場合には、急激に正常化させてしまうと害が出ることもあります。通常は、この点滴だけを1日中続けられることはありえません。必ず別の点滴と交替で使うはずです。     



維持液
細胞の成分に近い組成で作られていて、カリウムというミネラルを補いながら、ゆっくり回復を待つ時に使います。血液の組成とは少し違いますので、脱水や出血などで血圧が下がった緊急の時には、あまり効果が出にくいことがあります。
腎機能が落ちた時にはカリウムの害が出る場合もあります。また、ほとんどの人は維持液だけではナトリウム分が不足する傾向があります。


アミノ酸製剤
主にアミノ酸を加えて蛋白不足を補う目的で作られています。アミノ酸は代謝の維持に必要です。食欲不振が続く人には効果が期待できますが、補えるアミノ酸は必要に満たないことがほとんどですし、バランスを間違うと重大な副作用を起こします。万能の点滴液とは言えません。



中心静脈用輸液製剤
中心静脈栄養(体の奥を流れる大きな静脈に入れる点滴)のための点滴液です。よく病院で点滴の大きなバッグをぶら下げて売店に来られている人を見かけますが、あのバッグの中にはこのような液が入っています。
液の組成内容が大きな血管のなかにゆっくり注入するように作られていますので、私達の腕に見える皮下の血管には使えません。  


肝不全用、腎不全用アミノ酸製剤  
特殊な病態の時に使う、アミノ酸の組成が独特な点滴です。肝硬変から意識をなくした場合、腎不全の場合などに使います。適切な製剤を使わないと、意識障害が発生する場合もあります。  


ビタミン製剤  
点滴液に赤みがかった色が付いている時は、ビタミン剤などが混ぜてあることがほとんどです。特殊な病気、例えば何かの代謝不全や消化管の病気で長期間全く口からものを入れられない時期は、最初からビタミンを入れてないといけません。ビタミン剤でショックになる人も稀にはいます。ビタミン製剤は光に弱いので、1日点滴をする場合には通常点滴バッグを遮光する必要があります。最近はバッグの素材が進歩して、安定性が増しています。




診療所便りより        平成22年6月30日