
低糖質ケーキ
糖尿病の方は、お菓子を制限されたほうが無難です。でも、気にしながらも、ヤケになって結局は食べる方もおられます。日々、食べたい気持ちとの葛藤が繰り広げられているのではと想像します。
制限に意味があることは確かですが、医者や栄養士から言われるとシャクに障ります。より良く長く生きたいという自分の意欲によって自ら律するか、他人の指示に嫌々ながら従うか、そこは考え方次第ですが、精神面に関係する難しい問題です。
近年はカロリーへの意識が高まり、食品のカロリー表示は普通のことになりました。糖分を制限した菓子も売られています。そこで、そのような低糖質ケーキの影響を実験した報告があります[糖尿病55(6):380-385,2012]。
この報告はメーカーの宣伝目的のものではなく、ちゃんとした学者達の研究です。低糖質の菓子は人工甘味料を使い、カロリーは同じでも糖分の量が少なめです。そのため、食後の血糖値や分泌されるインスリン濃度は低く留まります。いっぽうで、意外なことに中性脂肪や遊離脂肪酸といった血中成分は高止まりする傾向もあります。味をまろやかにするために油脂成分が多くなりがちであることや、糖分不足に対応して、体が脂肪酸をエネルギー源にしようと血液中への排出量を増やす反応が起こる関係かも知れません。
低糖質食品は、食事制限の苦痛を和らげる効果が期待できます。制限ばかりでは楽しくありません。特に小児糖尿病患者の場合は、自分だけ甘い物を食べられない罰を与えられたかのような精神反応を受ける傾向があり、利用する意味はあります。
ただし味が微妙に違いますし、脂質への影響、長期的な害に関して充分解っているとは言えないなど、勧めるべきかどうかの結論は出ていません。そもそも大人が菓子にこだわるのは、感心できない印象もあります。 したがって今の段階では年齢や血糖と脂質のコントロール、精神的な面や血管の状態で個々に判断すべきだと思います。
個々に判断するというのは、例えば御本人は食事制限をしているつもりでも実際には多食している方、生真面目で食事制限をやりすぎてしまう方、カロリー計算が出来る方と出来ない方、肉類が多い方少ない方、早食いかどうか、甘党辛党の違いなど、食事に関する個々の違いに応じて、なかには低糖質食品を勧めても良い場合がありうるという意味です。直ちに全員に低糖質菓子を勧める、もしくは逆に総て禁じるべきではないと思います。
診療所便りより (2012.12.01up)
