タマゴの制限         

(制限の必要性)コレステロールが高くてもタマゴを制限する必要はないという発表があり、新聞や雑誌でも紹介されていました。情報発信元となったのは、アメリカの食品を管理する機関からの勧告だそうです。根拠となった試験もあるようです(Nutrients2014,6,2650-2667)。  
ただし、この試験はカロリー制限状態での比較らしいので、カロリーが多い状態で同じことが言えるかは不明です。カロリー制限状態では、当然ながらカロリーを生産する方向に代謝が作用します。コレステロールを作るより、余分なものを分解してエネルギーを作る代謝経路が活発になるはずで、コレステロールは上がりにくい状態のはずです。そのような状態での結果が、通常問題となっている栄養過多状態に当てはまるとは限りません。したがって、勧告の根拠は不充分と思います。
  

(適正量の議論)タマゴの摂取量に関しては、以前から議論になっていました。摂取を制限しても、コレステロールは体内で合成されますから、検査値はあまり下がりません。したがって過剰な制限は必要なく、常識的な量を勧めるべきでは?というのが私の意見です。
でも、時にはタマゴの制限でかなりコレステロール値が下がる方もおられます。下がる人は制限したほうが良いかも知れません。これは体質の違いなのか、性格、考え方の違いなのかは、よく分かりません。真面目すぎて他の食品も抑えてしまう個人の性格による可能性もあります。   
仮に毎日数個のタマゴを摂取した場合、本当に害が生じるのかも知りません。急死する人がいるという伝説のような話は聞きますが、寿命に関して信頼できる検討を読んだことがありません。
タマゴを食べた日は不思議と元気が出ます。それに、卵はヒヨコまで育つのに充分な栄養素が含まれているはずですので、栄養価の高い食品でしょう。脂質成分が多いことが気になりますが、脂肉ばかり毎日食べるより好ましいように思います。
でも常識から言えば、1日にタマゴ数個も食べる食事では偏っていると思います。蛋白質の源としては、魚や肉、大豆などとバランスよく食べたほうが自然ですし、カロリー源としては旧来通り、炭水化物をまず考えるのが伝統的な考え方です。タマゴのような脂質の多い食品をエネルギー源として摂取する考え方が、良い効果をもたらす保証は、少なくとも今の時点ではまだありません。  
もしかすると今後、タマゴを中心とした食事で寿命が延びると分かるかも知れません。根拠となった試験と同じように、炭水化物を減らして飢餓状態に近づけていれば、複数個食べても血清コレステロール値はそう上がらないはずです。炭水化物に偏った食事より、ひょっとするとですが寿命が延びるかも知れません。延びないとしても、元気は出そうです。  

(適量)1−2日に1個程度が適量と私は思います。卵を全く食べない、あるいは毎日数個食べるのは、よほど特殊な場合のみでよいはずです。この意見に充分根拠があるとは言えませんが、少なくとも日本の伝統的食事に近いので、害が懸念される考え方ではないと思います。  
制限にそれほど意味がないから毎日数個食べてよいという考えは、理屈に無理があります。 



 
  診療所便り 平成27年7月分より・・・(2015.07.31up)