勉強会資料 平成18年6月15日         

橋本泰嘉          

糖尿病と脳卒中

 糖尿病は脳卒中を起こしやすくすると言われています。脳卒中はマヒなどの怖い後遺症をきたす病気です。身近な方の中にも、この病気になられた方がおられると思います。この勉強会の目的は以下の2つです。

 1 予防を目指すこと
 2 早期発見、対処を誤らないこと    

用語が分りにくい話は省略します。おおまかに脳卒中の意味や症状を理解し、予防についての考え方を学びましょう。

脳卒中とは?

 脳卒中は英語のstrokeや、brain attackに相当します。脳の急性の発作というような意味の言葉です。けいれんや脳腫瘍、脳の外傷とは違います。脳やその周辺に栄養を送っている血管が破れて出血するか、血管がつまってしまう(梗塞)病気を意味します。つまり血管に関係する病気です。病名で言えば、クモ膜下出血、脳出血、脳梗塞が、その代表です。

 クモ膜というと分りにくいですが、クモ膜下は図では
脳の外側の色を塗った部分をさします。 斜線の部分は
脳出血がよく起こる場所です。 脳梗塞は、脳に血液を
送っている血管が詰まる時に起こります。場所は脳のど
こにでもありえます。


脳卒中の影響は?
 (生命に関して、社会的、経済的損失、精神的負担)

 脳卒中の社会的な意味は、まず命に関わる病気であることです。日本人の死因の統計が毎年のように発表されていますが、癌に続くくらいの死亡者数が報告されています。もしかすると脳卒中の合併症である脳血管性の認知症、麻痺によって起こる骨折、寝たきりになったための感染症などを含めると、いまだに死因の第一位かもしれません。

 脳卒中の社会的意味の第二は、家族や社会にさまざまな負担をかけてしまうことです。何かの後遺症を残した場合には、健康な時の仕事をこなすのは難しくなりますので、何かしら身の回りの方達にしわ寄せが生じますし、誰かに介護されなければならない時には世話をする人の負担は大変なものです。

 経済的にも損失があります。いままでの仕事ができなくなると、当然ながら収入が減ることが多く、入院や外来通院の費用、介護を依頼する場合はその費用。ちょっとした外出にも交通手段の違いから出費が増えがちです。            

 精神的負担も増えます。まず「どうして自分は病気に
なったのだろう。」「あの時こうしていれば病気になら
ずにすんだのでは?」「また再発したらどうしよう。」
など本人の悩みがつきることはありませんし、家族も
同様の悩みをかかえてイライラしますので、喧嘩も増え
がちです。



脳卒中の経過は?

 脳卒中の経過を簡単にまとめれば、以下の期間に分けられます。

  1 発作の前触れ、初期症状
  2 症状の不安定期
  3 症状の安定
  4 回復   

 初期から回復に向けた対策が必要です。 前ぶれの段階で発見できればいいのですが、一時的なマヒのような特徴的なものが出ることはあまりありません。症状があっても、ほとんどの場合は風邪などと区別できないように思います。

 初期には症状は安定していません。軽い麻痺だったのに次第に進行することや逆に完全に動かなかった手足が動き出すこともあります。麻痺が出るのは神経の細胞が機能を停止するからですが、発作の初期なら細胞が機能しなくなるのを防ぐことができます。例えば詰まった血管を再度開通する、薬品で神経細胞に傷害を与える物質の発生を阻害する、圧迫しているものがあれば圧迫を除く、等です。

 麻痺が残っても、リハビリで努力して著しく回復される
方がおられます。幸運と、正しい理学療法と、努力とがそ
ろえば可能です。



脳卒中の合併症について

 @肺炎A胃潰瘍B床ずれC尿路感染症(膀胱炎)DけいれんE嘔吐F脱水G高血糖H骨折I認知症(痴呆)J心不全   など様々なものが起こりやすくなります。脳浮腫、脳のヘルニヤも合併症と言えるかもしれません。

高血糖が脳卒中に与える影響は?

 @ 糖尿病は脳卒中の発生率を2〜6倍高める
 A 糖尿病性腎症の悪化
 B 糖尿病性網膜症の悪化
 C 出血を増やす
  D    肺炎の悪化


 血糖が食後に高いと、それだけで動脈の壁が厚くなるという実験結果があります。短時間血糖が高いだけでも意外に悪い影響があって脳卒中にも何らかの影響があるのかも知れません。

 長期的に見れば、糖尿病患者さんには通常の2〜6倍の発生率(性別や地域で相当な差があります)で脳卒中がおこると言われていますので、明らかに悪影響があると考えられます。主に動脈硬化を進めるためでしょうが、血糖が高いことでコレステロールや血液のサラサラ具合などの様々な面に影響があるようです。簡単に言うと、「血液は固まりやすくなる」 「血管は破れやすくなる」 ような感じです。

 糖尿病の合併症がすでに進行している場合は話が複雑になります。
例えば糖尿病性腎症で腎機能が悪化している時に脳卒中を起こすと、脳への薬が腎臓へ与える悪影響が予想される場合は、充分な量を使えません。

 脳梗塞の場合に、血液をサラサラにしようとすると眼底出血を起こして網膜症が一気に悪化してしまうこともありえます。マヒは軽くなったけど失明したのでは、治療して良かったのか分らなくなります。糖尿病患者さんは網膜に限らず出血を起こしやすい傾向がありますから、私の印象としてはいわゆる「血液をサラサラにする」系統の薬は、一般の人よりも慎重に使った方がいいと思います。でも、この面に関しては充分に検討されていないので、どこの医療機関でも使ってみて反応を見るというのが現状です。

 また、脳卒中の発作後はよく肺炎を起こしますが、糖尿病のコントロールが悪いと肺炎の治療成績が悪くなる傾向があります。

 

間違いやすい症状について

 今回の勉強会は予防と早い対処を目標としていますので、勘違いしやすい症状を説明します。脳卒中にはさまざまな症状がありますが、頭痛と麻痺、意識障害とシビレ、急にいびきをかいて意識がない、というように症状が重なれば誰でも卒中を疑えますが、例えば「頭を痛がらないから脳卒中ではない」、「意識がおかしいから脳卒中だ」とは言えません。

 以下に述べるような症状については、卒中の可能性を考えて対応するようにして下さい。

@ 意識について

   必ず意識がおかしくなるわけではない
   普段との様子の違いで判断すべきこともある
   酔っ払いに注意

 卒中の範囲が広い場合には、およそ何らかの意識の障害が出ることが多いように思います。でも、結構大きな脳出血でも意識がはっきりしていることは珍しくありません。卒中を起こした脳の場所と出血の量などの条件によります。意識がはっきりしているからマヒはありそうだけど様子をみようとは考えないようにしてください。

 注意しないといけないのが、「酔っ払いの人を連れて行きます。」と言われて、どうもおかしいので検査したら脳出血だったというケースです。普段と様子が同じで、ご家族も酔っ払っているとばかり思っていたということが少なからずあります。また、暴れて検査もできないような方の場合は、診断が遅れてしまうことがあります。 いつも酔っ払っていると卒中の時に見分けがつませんから、その意味でも飲まないほうがいいと思います。


A 頭痛について
   急に起こった頭痛は卒中も疑われる
   頭痛の程度は軽いこともある
   普段との様子の違いで判断すべきこともある
   脳梗塞では頭痛がないことが多い

 激しい頭痛が急に出たら、クモ膜下出血や脳出血を疑わなければなりません。検査で単なる頭痛だったと分ることがほとんどですが、急に起こった場合は確認が望まれます。もちろん意識障害やマヒをともなっていれば、ぜひ救急車を呼ぶべきです。

 出血の場合には頭痛が出ることが多いようですが、絶対ではありません。激しい頭痛を生じるはずのクモ膜下出血の患者さんでも頭痛を訴えない人がおられます。背中が痛いと言ってこられた方や、あごがガクガクするだけという患者さんも経験したことがあります。脳出血の場合には、頭が重い、風邪か?くらいの程度であることは少なくありません。この場合、麻痺がなければ早期に発見するためには顔色がおかしい、なんとなく様子がいつもと違うといった勘に頼るしかないこともあります。

 また脳梗塞(血管が詰まるほうの卒中)では、頭痛を訴えないことが普通ですので、頭痛がないから麻痺があっても救急車は呼ばなくていいだろうと勘違いしないで下さい。重傷度は見た感じではわかりません。








(左)静かだが重症の脳梗塞      (右)激しいが一時的な頭痛

B 麻痺について
   左右どちらか片方のマヒは卒中のパターン
   最初は軽いこともある

 マヒ(かなわなくなること)は、脳のどの部分をやられるかでおよその範囲が決まりますが、左右どちらか片方のマヒの場合は、脳卒中をまず考えないといけません。発作の初期に軽かったのにだんだん強くなるか、逆にうそのように消えることもあります。

 麻痺が急に出て意識がもうろうとしている、頭痛が激しいというように重なれば誰でも救急車を呼ぶでしょうが、微妙な麻痺で頭痛などの他の症状を伴わない時は診断に苦労することがあります。

 麻痺のパターンが
いくつかありますので
図に示します。
マヒが図の左側や真ん中
のようなら、卒中に多い
パターンです。でも両側
に出たから卒中でないと
は言えません。




 顔の筋肉のマヒも多い症状です。目を開けにくくなる、唇が片方だけ下がる、うがいをすると唇の片方から水が漏れるなどすれば、見た目で気がつきますから卒中ではないかと疑われる人が多いのですが、通常は顔だけのマヒの時は単純な神経のマヒであることが多いようです。ただし、病院と連絡だけはしたほうが無難です。



C メマイについて
   はじめてのメマイ発作は検査を
   いつもと違う発作のときも検査を
   写真の機械や撮り方にも注文が必要

 はじめてメマイの発作を起こしたときは、念のため脳の検査をしたほうがいいと思います。メマイはほとんどの場合は原因不明で、検査で分る卒中や腫瘍などのような異常はまれです。

 脳卒中でメマイが出ることは、それほど多くはありませんが、脳の奥のほうに小さな卒中を起こした場合は、メマイしか症状がないこともあります。非常に小さな卒中の場合には、なかなか写真でも分りません。専門病院に入院されてどれだけ調べても分らなかったのに、もしやと思って脳の写真を撮る機械を代えたら脳梗塞と分ったこともあります。小さい卒中の診断に関しては、良い医者より良い機械のほうが頼りになるかもしれません。

 CTを撮ってもらう場合は、通常より「スライス」という設定を小さくしてもらうとはっきりすることがあります。メマイに関係する場所は骨に囲まれているので、通常のスライスでは写りにくいのです。メマイに関しては、可能ならMRIで、それも性能の良い機械で撮ってもらったほうがいいかもしれません。

   (右) 頭蓋骨の図

 メマイに関係するのは図の真ん中から下のあたりで、
骨の形に影響されて画像が見にくく、小さな梗塞は写
らないことがあります。




Dしゃべりにくい、飲み込みがおかしい
   急に出た言葉の障害は卒中が疑われる
   言葉と飲み込みは同時に悪化しやすい
   誤嚥に注意

 のどや、舌、口の動きが麻痺によって発音がしにくくなる場合と、言葉のいい間違いが多くなる、意味のわからないことをしゃべるなど、脳の場所によって違いがありますが、脳卒中で話しにくくなることはよくあります。また、このような場合はものを飲み込む動作にも障害がでていることが多いようです。そのために食べ物を気道のほうに吸い込んでしまって肺炎を起こすことがあります。


E目の見え方がおかしい
   眼の動きに異常があれば、脳か神経の異常のことが多い
   眼を動かせて判断
   動きに異常がなければ、多くは眼の中の異常

 目の見え方は、視力が落ちたのか、目の動かし方がおかしくなったのかによって、およその原因が推定できますが、症状を言葉で表現しにくい時には診断に困ることもあります。

 卒中以外の理由、例えば糖尿病性神経障害で目を動かす筋肉の麻痺が起こり、物が二重に見えるようになる患者さんは多いのですが、過去に脳卒中を起こしたことがある場合には、脳卒中によるのか神経障害によるのかを区別しにくいことになります。もしご家族の方が「急に物が二重に見え出した。」と言われて、目の動きを見たら下の図のようになっていた場合は目の筋肉にマヒがあることになります。もともと斜視の傾向がある方の場合は、目を実際に動かしてもらわないと分りません。

     「右を見て下さい。」     「左を見て下さい。」

     動きがおかしいことに気づかれますか?



 上のような明らかな目の動きの異常がなくても、実は微妙な動きの障害があることがあります。でも、眼自体の異常で二重に見えることのほうが多いようです。例えば網膜はく離や網膜のむくみなどです。したがって多くの場合は、動きに異常がなさそうな時は眼科の問題、動きが明らかにおかしければ内科や脳外科の問題か?と考えて相談すべきです。(決めてかからないほうが無難ですが。)

 卒中の場所によっては、視野(見える範囲)が狭くなることもあります。視野が狭くなっても、頭の向きを変えれば見えないわけではありません。中には頭の向きを調節するのに慣れてしまって、本人は視野の障害に気づいていない人もおられます。症状が急に起これば気がつくと思いますが、ゆっくり段階的に進行する場合もあるようです。

 糖尿病性網膜症で見えなくなったとばかり思っていたら、卒中だったと分ることもありえます。卒中と網膜症と両方合併している場合には、本当に診断が難しくなります。

 

Fしびれ、感覚の異常
   片方のシビレは卒中のパターン
   両手、両足の先は神経障害のパターン

 シビレにはいろいろあります。ビリビリくる、感覚が分らない、逆に過敏になっている、または動かないなどはすべてシビレと表現されますから、どういう症状なのかをはっきり伝えなければ医者には意味が伝わりません。卒中の場所によって、シビレも場所が変ります。卒中で多いのは下の図の左のように片方の手足にでるパターンです。






















 糖尿病性神経障害でも感覚がにぶくなったり、痛くなったりしますが、典型的な場合は図の右側のように手先、足先に起こりますので、先ほどの場所と違うことがお解りいただけると思います。



Gけいれん

 けいれんが脳卒中で起こることがあります。けいれんは他の病気でも起こりますから、急に起こった場合は、見ただけでは何が原因か判断できません。強いけいれんの後は、通常でも意識がもどるのに時間がかかりますから、卒中による意識障害なのか分りにくいことがあります。

 卒中が脳の表面に近い部分に起こると、けいれんを起こしやすいと経験上言われています。けいれんの原因は調べにくく、半身だけに強い麻痺とけいれんがあるので卒中に違いないと思った患者さんが、首のケガの後遺症が遅れて出現しただけだったということもありました。

 いずれにせよ、けいれんを起こしたら救急車を呼んで下さい。


一般的な脳卒中の治療法

 脳卒中は緊急を要する病気です。発作の早期に発見できた場合には専門家のいる病院に行くことをお勧めします。うまくいけばマヒが軽くて済む可能性があるからです。ただし、病院によっては過激な治療のために死亡率がかえって高いこともありますので、いちかばちかの面はあります。病院の治療成績について主治医に確認したほうがいいかもしれません。

 出血の時には、手術で改善が見込めるならば手術が原則になります。どんな出血でも手術で治せるわけではありません。出血の場所と量で成績が予想されますので、例えば手術しても病状が悪化することが予想される場合には、出血自体には特に治療をしないことになります。血管が詰まる卒中(梗塞)ならば、薬での治療が原則になります。

 リハビリは熱意と経験のある理学療法士がいるところで、発作の早期から毎日かかさずやることが必要です。症状が安定したら、今度は方法を指導してもらって、自宅で続けることが大事です。熊本県は熱意のある先生達の努力で、この面の連携がうまくいきつつあります





          「閉じこもらず、シャル ウィ ダンス」









脳卒中の予防は可能か

 予防は可能です。脳卒中は何らかの後遺症を残す病気ですから、発作を起こせば、どんな良い病院に行っても治療に限界があります。可能な限り予防すべきだと思います。最近は予防に関する試験がいろんな形でされています。いずれもコントロールするほど効果があるようです。


@コレステロールの治療の基準に従いコントロールする

 コレステロールが高い人は、糖尿病の方と同じように脳卒中を起こす確率が高いのですが、コレステロールの治療で発作をかなり減らすことができます。基準に従えば、およそ2〜3割は発作を減らせるだろうと言われています。血液中のコレステロールを下げると、血管の壁の中でもろくて裂けやすい部分が安定すると言われていますので、簡単に言えばブヨブヨになった血管を丈夫にするというような意味で効果があるのでしょう。


AHbA1cを目安に血糖値をコントロール

 血糖のコントロールで脳卒中がどれくらい減らせるかについても統計がでています。イギリスの研究ではHbA1cを1%下げただけで、脳卒中は1割くらい減るだろうという結果でした。この研究は、日本のように徹底的な治療をしないでの結果でしたので、徹底すればもっと効果があるかもしれません。


B 血圧の治療の基準に従って血圧をコントロール

 血圧の治療も効果があります。例えば、拡張期血圧(下の血圧)を5下げるだけで、卒中の危険度が3割減るという統計もあります。また、先ほどのイギリスの研究では収縮期血圧(上の血圧)を10下げると、脳卒中は2割減るという結果でした。下げれば下げるほど良いとは言えませんが、特に糖尿病を持っていらっしゃる方にとって、血圧は重要になってきます。
 薬の種類によっても若干の効果の違いがあるようですが、下げることが最も大事だと思います。ただし、一気に下げると成績が良くないようです。


C 肥満を是正すること
D タバコを吸わないこと
E 塩分を強力に控えること

 全身的な影響を考えると、保健婦さんや医者が言うことはすべて予防効果があり、聞いておいたほうが良いと思います。特にタバコを吸うと、血圧の治療効果を打ち消すくらい強力に血管を傷めますので、禁煙が絶対に必要です。

F血管の検査を受ける

 首から脳に入っていく血管の太さや血管の壁の厚さは、エコーという機械で簡単に分ります。もし非常に細い所が見つかった場合は、狭くしている部分を拡げる、血管のバイパスを作るなどの治療が効くこともあります。 脳ドックで脳血管に動脈瘤が見つかった場合も破裂を防止できるかもしれません。動脈瘤に詰め物をつめたり、クリップをはさんだりすることによってクモ膜下出血が予防できます。 これらは特殊な治療ですから、この分野に慣れた脳外科と相談しないといけません。

 

脳卒中の予防薬について

 脳出血を予防する薬は、通常は止血剤ではありません。止血効果のある薬剤はありますが、脳出血に関しては予防効果がはっきりしていないようです。したがって、血圧やコレステロール、血糖の治療を厳格にして観察することが出血の予防になります。

 これに対して、血管が詰まるのを防ぐ薬は、脳梗塞を予防する効果がかなりあります。薬を飲んだ人と飲まなかった人を比べた統計があって、飲んだ人のほうが卒中の発症が少ない傾向があります。

 ワルファリン(商品名ワーファリン、アレファリンなど)、チクロピジン(商品名ソーパー、パナルジン、チクピロン、パチュナなど)、シロスタゾール(商品名プレタール、シロステートなど)、アスピリン(商品名バイアスピリン、ニチアスピリン、バファリンなど)クロピドグレル(商品名プラビックス)など、たくさんの種類があり、各々の適応がおよそ決まっています。

 ただし、薬の副作用でどこかに出血したり、肝臓を悪くする人もいます。網膜症の状態が悪い人などは、眼底出血を起こさないかを頻繁に検査しながらでないと簡単には使えません。血液や内視鏡検査なども、他の患者さんより頻繁にすべきかもしれません。また、これらの薬で脳卒中のすべてを予防できるわけではありません。




            夢の予防薬はない



 網膜症のために止血剤を使っている人が脳梗塞になった時に再発予防をどうすべきかについては統計がはっきりでていませんので、専門家でも明確に答えられる人がいません。少量の予防薬を処方するのが一般的ですが、網膜症が悪化することはあります。眼科と相談しながら、通常より慎重にすべきかと考えています。

 健康食品で予防効果があるものはどれか、残念ながら調べることができません。製薬会社は宣伝が非常に巧妙ですので、知り合いに勧められたからといって簡単に信じこまず、主治医と相談しながら決めたほうがいいと思います