真空採血管
採血で真空採血管を使う場合に、採血管の中の菌が逆流して血管の中に入る可能性があります。
採血管の内部は陰圧ですから逆流などしないはずですが、一瞬なら内容が血管内に流れ込む可能性があるそうです。したがって採血の時に図左の向きでは危険で、図右のように針を上に向けて、血液が底の方に行くようにしないといけません。ご存知でしょうか?
また、採血管の保持用ホルダーも不潔なので、一回ごとの交換が推奨されています。しかし、県内の医療機関を調査したところ、大きな病院ではほとんど無視されていたと報告されました。
厚生省も通達は出ていましたが、やりっぱなしで、その後の確認などを怠っていた問題が指摘されています。また、役所は次々と根拠が希薄な通達を出し、根拠を聞いても答えないという姿勢を貫くのが常なので、「また妙な通達を出したな。事故の可能性は低いから観察しよう。」という病院側の思惑が働いたのかも知れません。
行政側は構造疲労に陥っていて、マズい手ばかり打っている状況をさらけだした格好です。実際にホルダーを介した感染が多発したという証拠はなく、単なる杞憂に過ぎないのかもしれません。
いっぽうの病院も構造疲労状態にあるのかも知れません。病院では安全管理の会議が毎月開かれています。患者さんの保護のために知恵を出そうというのが目的です。内幕をさらすようですが、現実に「真空採血管を使わないようにしよう。」「採血管ホルダーを使い捨てにしよう。」と提案すると、ほぼ確実に反対されます。
看護師にとっては手に血液が付く可能性が増える、手間が増えるなどの理由がありますし、経営側には採血器具の費用が負担になることが問題です。安全を最優先にという目的は、どこかに置いてしまいがちです。
もし病院が政府の通達を無視して独自の判断をする場合は、本来なら根拠を患者さんに明示すべきだと思いますが、意見を提示した施設は知る限りなかったようです。したがって、危機管理の面で双方に過失があると考えます。
私は考え方が違います。当院では開設以来、患者さんの安全を最優先し、そもそも真空採血管を直接使わないことにしています。当院だけではなく、良心的な医療機関はほとんどそうです。面倒ですが、注射器でいったん採血してから試験管に移します。当院の方法では手間やお金の面では損するのですが、万が一の感染事故を避けたいと考えます。
診療所便りより 平成20年8月