心不全の治療法 


心不全は意外に頻繁に起こります。心臓病以外の病気で入院された患者さんでも、具合が悪い人の多くは心不全状態だと思います。レントゲンなどで解る程度になるのは、かなり病状が進んでからです。塩分制限と、病状が悪化した時は安静、良くなれば体操するのが日常生活の基本です。


心不全の治療法は随分変りました。いわゆる強心剤は、あまり使われなくなってきています。今は利尿剤と血圧の薬が治療薬の基本です。説明書に「血圧の薬」と書いてあっても心不全に対する薬であることもあります。


昔は心機能を落とすから使わないように言われていたβブロッカーという薬が、今は逆に使うように勧められています。ただし、昔から使っている医者は少数派ですので、ほとんどの先生は慣れていません。状態に応じてサジ加減する必要があります。  


なぜ血圧の薬が心不全に効くのか解りませんが、おそらく過度の負担を心臓の筋肉に与えないこと、心筋の性質が変わっていかないようにすることなどに関係しているようです。血圧が下がると、そのまま下がりすぎて心臓が止まってしまわないか心配される患者さんがおられますが、血圧が低いほうが寿命が延びることが多いようです。  


利尿剤は今でも治療の大きな柱です。塩分摂取の多い日本人の場合は、塩分を減らすような意味合いもあると思います。塩分の取りすぎは血圧を上げる傾向もありますし、心臓や腎臓への負担を増やす意味合いもあると思われます。ただし、利尿剤は副作用で血糖値を上げたり、脱水のようなミネラル異常を起こすこともありますので、定期的に副作用の検査をする必要があります。最近は副作用の少ない利尿剤や、利尿剤の親戚のような血圧の薬(血圧を上げるホルモンを阻害する薬)が発売されています。



治療法が進歩したため病状が悪くなる人は少なくなりましたが、進行してしまうと治療が難しくなります。特殊なペースメイカーを入れてもらった患者さんもおられますが、夢のように効いたとは言えない程度の効果でした。やはり基本は予防です。血圧の薬で予防が可能です。




診療所便り平成19年12月より