新年おめでとうございます。当院は目標として、患者さんにとり真に有益な医療を目指していますが、まだまだ道半ばであると感じざるをえません。 個人的な理由で診療を疎かにしないこと、健康管理に対する使命感、できることをさせていただくという基本姿勢から見直したいと思います。本年もよろしくお願いします。 


 ランニングの効果       

ランニングすれば健康に良い効果がありそうですが、狭心症などの心臓病を起こして意外に寿命を縮めるかも知れません。また、どの程度やれば良いかも明確には言えません。それらを確認する統計が発表されました(J Am Coll Cardiol.2014; 64(5): 472- 481)。  
その結果では、ランニングの習慣のある方は、心臓の病気を含めた全ての死因を検討しても、寿命が延びる傾向がありました。延命効果は最大でも数年程度に過ぎないようですが、明らかに有効と考えて良さそうです。 
では長時間、激しく走れば良いかというと、走る距離や時間はそれほど関係なく、短時間でも充分だったそうですから、死にもの狂いで頑張る必要はないようです。足腰が丈夫でマラソンでも出来る方に、激しく走る必要はないからと制限すべきとは言えないはずですが、距離や時間にこだわって誰かと競争したりするほど頑張っても、意味はなさそうです。     

運動が寿命を延ばすかどうかは、様々な統計的検討がなされてます。自転車による運動は有効という発表が過去にありましたが、ランニングや歩行、プール運動、ダンスなどに関しても有効とする確実な証拠があるとは言えません。意外ですが、どこでも勧められるはずの散歩が本当に寿命を延ばすのか、延ばすとするとどの程度という問題は、実は確実に解っているとは言えません。
プール運動は対象者が固定するので統計をとりやすい気がします。各施設には何かの統計結果があるかもしれませんが、大規模な報告は見かけません。 

今回の報告は常識的な内容と言えばそうでしたが、細かく考えると走り方や、走る場所、特に近年はPM2.5の問題がありますので、たとえば空気がきれいなところかどうかの問題や、朝が良いか夜が良いかといった点は、今後また検討すべきでしょう。PM2.5が多い地域でランニングすると、逆に寿命が縮まっても不思議ではありません。 それに、残念ながら日本人でも論文と同じ事が言えるかどうか、持病がある方とない方で違いがあるかどうかも詳しく検討されているとは言えませんから、今回の結果に飛びついて急に走り出すのもいかがなものかと思います。
持病の悪化は怖いので、主治医との相談は必要でしょう。 
また、散歩の効果が証明されていないから散歩はダメで、走らないとダメとも言えないはずで、何かの運動をされれば良いのではないかと考えます。   

実際に走ると転倒や交通事故、関節の故障などの問題は起こりえます。心臓病の有無などは定期的に確認してから運動したほうが安全です。これらに充分な注意をされるなら、軽いランニングは寿命を延ばすと考えて良さそうです。 


  診療所便り 平成27年1月分より・・・(2015.01.31up)