薬剤乱用(過使用)頭痛
薬剤乱用頭痛は片頭痛の薬がよく処方されるようになってから問題になり、専門家が注意を喚起するようになりました。
実は経験的には昔から知られていました。そのため私は鎮痛剤の使用量を制限し、連日使う処方は避けてきましたが、多くの先生は患者さんの苦しみを取ることを優先するあまり、過剰に使う傾向があったと思います。
原因薬としてエルゴタミンという薬は以前から有名で、頭部の血管の収縮に悪影響を残すことがあります。エルゴタミンとは機序が違うかも知れませんが、あらゆる鎮痛剤が頭痛の原因になるらしいと言われています。例えば、風邪薬、市販の頭痛薬、整形外科の痛み止めなどです。風邪薬も、とは驚きです。
なぜ薬に反応するのかは解りません。薬を止めると頭痛が出る、飲むと楽になるを繰り返すので、薬がいかにも有効なように感じてしまいますが、そんな人の中に実は依存性のような害が出ていた人もいるということになります。ただし、常用していても何の害もない人のほうが多いはずです。この妙な反応が起こる確率は高くはありません。
月に15日以上頭痛が発生し、10〜15日以上も鎮痛剤を飲んでいる場合は、薬がクセになって痛みが再発する不思議な現象が起こりやすいようです。ご自分の使用頻度を確認されたほうがいいでしょう。頻度が多ければ専門施設を受けて、場合によっては入院して薬を減らすことが望まれます。
薬は基本的になるべく少なめがよいと思いますが、痛み止めは「解っちゃいるけど、止められない。」ために特に注意が必要です。薬の使い方は難しいので一概には言えませんが、一般に腕が良い、あそこの薬は良く効くと言われていた病院は、鎮痛剤を使いすぎる傾向があります。患者さんの評価と医療レベルは必ずしも一致しません。
鎮痛剤の習慣性には気づいておりましたので、私は今までも必要最小限しか処方してこなかったのですが、患者さんや他の医者からは苦情を頂く結果になっていました。「痛みをこらえろと言うの?」と不満をもたれても当然です。でも、医療人は自分が適切に薬品を使っているか、今の医療行為が将来も許されるレベルかどうかに神経を使うべきです。
「他の先生が使っているから根拠は解らないが使う。」「当時は害を知らなかったので気にしなかった。」という考え方では、薬害を防ぐことはできないと思いますが、薬剤乱用頭痛のことを考えると、我々の処方には問題があったと思います。
診療所便りより 院長 橋本泰嘉 平成21年5月