新しい抗凝固剤 

血をサラサラにして血管が詰まるのを予防する薬のひとつに「ワルファリン(ワーファリン)」があります。この薬を上手く使うと塞栓症が減ります。   

いっぽうで薬が効きすぎると出血が起こります。そのため薬の効果を調節する必要があり、毎月のように検査して血液の固まり具合を調節します。

検査はPT−INRなどと略されますが、うっかり検査を受けないまま多めにワルファリンを飲んでいた人の中には、薬が効き過ぎて脳出血を起こされたり、皮下出血だらけになって救急外来に来られる人もいます。そのようなときにはPT−INRは高い数字が出ます。 逆に少なめに飲んでいて効果が発揮できなかった人の中には脳塞栓を発症してしまう人もいます。この場合はPT−INRは低めの値を示しています。 毎月の検査は採血を要するので、患者さんの苦痛になっていました。  

また、この薬は
飲み合わせが多く、安定剤や抗生物質などを使いにくくします。
ワルファリンと相互作用のある薬(の一部) 
効能  薬品一般名  製品名(例) 
   解熱剤、鎮痛剤  アセトアミノフェン  カロナール
 ジクロフェナックNa  ボルタレン
 メフェナム酸 ポンタール 
 ロキソプロフェンNa  ロキソニン
 抗生物質   クラリスロマイシン  クラリス
 エリスロマイシン  エリスロシン
 抗真菌剤  イトラコナゾール  イトリゾール
 糖尿病薬  グリベンクラミド  オイグルコン
 胃潰瘍の薬   シメチジン  タガメット
 オメプラゾン  オメプラール
 高脂血症の薬    ロスバスタチン  クレストール
 フルバスタチン  ローコール
 ベザフィブラート  ベザトール
 催眠沈静剤  フェノバルビタール  フェノバール
 抗てんかん剤  バルプロ酸Na  デパケン


さらに、この薬を飲んでいる人は納豆を食べないようにする必要があります。納豆が薬の効果を落とすからです。納豆の他に、クロレラや大量の緑黄色野菜なども効果を減じますが、あまり考えていると食べるものがなくなるので、野菜に関しては気にされないほうが良いと思います。    

最近発売された「プラザキサ(ダビガトラン)」はワルファリンと同じような作用を持ちますが、効果が安定しているため、ほとんど患者さんで量を調節する必要がないと言われています。 納豆やクロレラ、ブロッコリなども気にせず食べてよいはずです。 併せ呑みが全くないわけではないようですが、他の薬との併用もやりやすくなります。 また、ワルファリンと比べても、塞栓予防効果は充分あると言われています。 副作用のチェックのために、開始してしばらくは血液検査をする必要があるでしょうが、継続的に毎月必要とは思えません。 

便利な薬なので、やがてはワルファリンを市場から駆逐するかもしれないと思いますが、ワーファリンが非常に値段の安い関係もあって相対的に値段が高く、歴史が浅くて害がはっきり解らないのが難点です。害は少ないだろうとは言われていますが・・・



診療所便りより  2011.06.30up