ポリピルという言葉をご存じでしょうか?
血圧やコレステロール、血糖値などは、お互いに影響しあっていますから、各々の薬を飲むのではなく一つの薬にまとめて悪化を予防できないかという考え方です。
平成22年6月現在、この趣旨に近い形で発売されている薬はなく、血圧の薬の合剤が意味が近いと思えるだけですが、やがては色々な組み合わせが可能になり、本格的なポリピルも使われるようになるでしょう。
私自身、慢性疾患の方への処方薬が多くなってしまうことに不満を感じています。でも寿命を延ばすために必要なことが明らかなので、なかなか減らせません。それでも、工夫しますので他の医療機関よりは少ないはずです。
どのような薬がポリピルの候補になっているかというと、血圧の薬、コレステロールの薬、利尿剤などの混合剤などですが、もしかすると抗肥満薬、アディポサイトカインという蛋白に対する薬が有効かもしれないと思います。ただし、これば未だ想像の段階です。
糖尿病の薬の中には、糖尿病でない人が飲むと糖尿病を予防できる効果が証明できているものがあります。コレステロールの低い人がコレステロールの薬を飲むと心筋梗塞が減る効果なども証明されつつあります。それなら最初から飲んだほうが良くないかと考えるのも当然でしょう。
ただし、最高の予防薬は生活習慣を改善することだと思います。現実的には改善できない人が多いので、あくまで理想としてですが、生活上の問題でで直せるものは直すべきで、薬に頼るのは自然なこととは思えません。
肥満がある場合は、肥満が血圧や血糖値などに関係してくるので、今の検査で血糖値などに異常がなくても放置して良いわけではありません。「自分は太っているが血糖値には自信があったのに、まさか糖尿病になっていたとは・・」と嘆かれる人は多いのですが、そもそも根拠のない自信だったのではないでしょうか。
また、例えば「血圧はおたくの病院にかかり、糖尿病は大病院にかかり、心臓は知り合いの先生にかかる。気を悪くされると嫌だから黙ってますけど。だって各々の専門と書いてあるから。」といった考え方は、各疾患が関係しあっているので、おかしいのだと気づいて欲しいと思います。
医療機関も各々の営業がからむためか、似たようなレベルで考えています。実際に、循環器専門医が血圧の治療で血糖を上げる、心臓の治療で網膜症を悪化させる、逆に糖尿病専門医が糖尿病の薬で心不全を起こすのを経験します。連携するのは、簡単ではありません。
現実にポリピルが発売されてみないと本当の意味も解りませんが、もし病気を減らす効果があるならば、医療を大きく変えることができるかも知れません。
診療所便りより 平成22年6月 院長 橋本泰嘉
ポリピル