お茶の功罪    

お茶の効能は、カフェインとタンニン、その他のアミノ酸、ビタミンなどによって生じると言われています。その効果として気分の高揚、眠気防止、発癌の抑制、代謝活性化作用などは知られていますが、紀元前から嗜まれているのに、よく解っていない点も多いようです。  

[タンニン] 
飲む量が多い場合には害も生じる可能性があります。 含有物のタンニンが薬やミネラルの吸収を抑制することがありますし、便秘や、稀には肝障害を生じます。  
薬の吸収をどの程度妨げているのかについて過去に様々発表された時期がありましたが、お茶は淹れ方によって濃度にばらつきがありますので、当然タンニンの量にも差があり、また薬とお茶の飲用時間の微妙な違いによっても阻害作用は違ってくると予想されますので、発表内容を鵜呑みにはできません。 
鉄分などのミネラルの吸収にもタンニンが作用するらしいと書かれていますが、その程度については様々な表現があります。なかには「食事といっしょにお茶を飲むと、鉄分はほとんど吸収されない。」と述べている書物もあります。でも、必ず食事とお茶をセットにして摂取されている方の全員が貧血に陥ってはいませんので、真偽のほどは不明です。

[カフェイン] 
不眠傾向のある方は、カフェインが微妙な興奮状態を作っている可能性もあるため、午後の摂取を制限するように勧めるのが一般的です。でも、これも確実と言ってよいかは解りません。もしかすると摂取量によっては、長い時間かけて徐々に腸管からカフェインが吸収され、遅効性の効果が発揮されて夜間も興奮している可能性もあり、カフェインを含む飲料はそもそも不眠症の方には禁止すべきかも知れません。  
カフェインには利尿作用もあると言われています。このため脱水の補正や、喉渇きに対して茶を摂取するのは必ずしも効果的ではないと考えられますが、実際には薄めて飲むことで問題が生じないようにも思いますので、はっきりしません。 

[シュウ酸]  
お茶に含まれるシュウ酸が、尿管結石の原因になりうるという話もよく書かれています。摂取量と結石の形成率の具体的な関係は読んだことがありませんが、多量に摂取される場合は、結石を発生させることがあるかもしれません。これもお茶の濃さによっては希釈効果によって気にしないで良いのかもしれません。 

[発癌抑制] 
お茶に関する研究はたくさんありますが、大きな発表になりにくいため、どこまで信用してよいのか判りません。微妙な作用を、ことさら強調している場合もあるように思います。 
例えば発癌の抑制効果があるそうですが、非常に微妙なもので、統計を使ってやっと証明される程度と思われます。ですから「お茶を大量に飲めば癌は起こらないから、タバコを吸っても大丈夫。」などという理屈は成り立ちません。 

[カテキン]
お茶にも種類がたくさんありますし、飲料や健康食品としての商売が絡むので、宣伝に踊らされてしまいがちです。 宣伝に使われている成分の‘カテキン’は代謝の活性化作用があるそうですが、コマーシャルのように体が燃え出すほど代謝が活発になるはずはなく、これも肝障害などの害をもたらす可能性があるそうです。
 

[有害事象の認識]  
便秘、不眠、肝障害、貧血がある方は、主治医と相談してみたほうがいいだろうと思いますが、おそらく明確なことを言うのは誰にとっても難しく、個人的な意見しか言えないだろうと思います。 
でも下記の可能性は認識しておかれたほうがいいでしょう。@便秘を悪化させているA薬の吸収を阻害させているB貧血の原因になっているC不眠に関係しているD肝機能障害に関係しているE尿管結石に関係している
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診療所便り 平成24年9月分より(2012.09.30up)