高尿酸血症の原因
尿酸値が高い人は多く、当院でも数種類の薬を処方しています。尿酸が高いのはカロリーが多すぎるか、腎機能の低下を意味すると思われてきましたが、腸も関与していることが発表されました{(Nat.Commun.3:764 doi:10.1038/ncomms 1756 (2012))。尿酸排泄に関係する蛋白が腸にも存在していることが判り、調べると尿酸は腸管にも排泄され、その機能が足りないと血中濃度が上がるようです。
尿酸が高くて困るのは、痛風が起こりやすくなることの他に、血管や腎臓への負担が懸念されることです。値が低くなっても油断はできません。尿酸値が低くても痛風を発症する方はいますので、見かけ上の改善だけでは安心できません。 また、尿酸は尿管結石の形成にも関係していると思われます。
もし腸への排泄を良くする薬が開発されたら、美食しても尿酸が上がらないようになるかも知れません。ただし、それで問題解決とは思えません。第一に、薬は飲まないで済むなら飲まないほうが良いですし、飲むことで寿命が延びなければ意義は低いと思います。 仮に薬によって尿酸値が上がらなくなっても、血糖値やコレステロールなど、他に動脈硬化の指標となる項目がありますから、それらをコントロールできないままでは、結局は動脈硬化を引き起こすと考えるべきでしょう。尿酸値を下げても、美食や過食による他の問題を無視できるとは考えられません。
つまり尿酸値が高い場合は、内臓や血管に負荷がかかっていることを意味すると考え、カロリーを減らし、血圧を下げて腎臓を守ることなどを考えるべきです。
ただし、腸管からの尿酸排泄を増やしつつ、血糖やコレステロール、血圧もいっしょに下げる治療法が解れば、その時は意味があると思います。 そのような夢の新薬によって、内臓も血管も守られるようになれば、苦しい食事療法など必要ない時代が来るかもしれません。
現時点で尿酸値が高い場合は、原因のいかんに関わらず内臓や血管への負荷を減らすこと、つまりカロリーを減らし、血圧を下げて腎臓を守ることを考えるべきで、その点に関して今回の発表は影響しないと考えます。
(診療所便り 平成24年6月分より 2012.06.30up)