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ノロウイルスについて
昨年もノロウイルスが流行しました。今まで「カキにあたった。」「生ものが合わなかった。」などと言われた人の中にも、このウイルスの感染症の方が多かったと思います。
もともとは生ガキなどに付いていることで有名なウイルスですが、まな板や感染者の手を介して拡がりますので感染源が特定できないことが多くなります。
不思議なことに、同じウイルスに感染しても食欲が落ちるだけの人、激しい腹痛と発熱がある人、下痢する人、便秘になる人が混在します。血液検査では白血球が増える人もいるので、膵炎などと区別しにくくなる場合もあります。
以前勤務していた病院に、このウイルスに感染した食中毒の修学旅行生が100人以上、いっぺんに来院されたことがありました。医者と数十人の看護師が徹夜でフラフラになりながら診療しましたが、そのときはスタッフ全員がこれは間違いなく細菌性食中毒だと考えてしまいました。重症の場合は細菌による腸炎と区別は難しくなります。
今のところ検査を健康保険が認めませんから、一般の検査でウイルスを確定できないことが問題ですが、食中毒のように集団発生した時は保健所に届け出ますから、その時は診断できます。これだけ多発したのですから、簡易検査キットを作り保険での検査も認め、家族や施設内の感染を防ぐべきだと思います。
食中毒という概念が昔の役人が決めたものなので、今の保健所の活動ではこのウイルスには有効に働いていないのは問題だと思います。このウイルスは、食中毒の原因にもなりますが、食事と関係なくても拡がります。
感染の拡がりを防ぐためにはウイルスが含まれると思われる吐物や便を適切に処理することが大切です。便器、便座はもちろん、ドアノブや手すり、水道まわりなどにもウイルスがいると考えなければなりません。手を洗ったからと安心せずに、洗った後のタオルを共用せず、できればティッシュなどで拭き取ること、汚物を拭いたティシュなどはビニール袋に入れて封をすることが大事です。
消毒も可能ですが、そこらじゅう消毒すると人間にも害が出てきますから拭き取ることを原則にすべきだと思います。市販の除菌製品はこのウイルスには無効だと思いますので過信しないようにして下さい。
生ガキはもちろん危険ですが、ちょっと炒めた程度で熱が充分に通らない場合もウイルスは生き残るようです。また、いったん感染すると長期間(20日?)ウイルスが腸管の中に残る場合があるそうですので、家族が遅れてもらう可能性があります。症状も2週間くらい続く人がいます。
診療所便りより 平成19年1月 院長 橋本泰嘉