認知症の治療法
認知症の患者さんを診察すると、本当に気の毒に思います。できれば私は認知症になりたくないですが、おそらく皆さんもそうでしょう。さまざまな予防法、治療法が考えられています。
認知症といっても、いろんな型があると言われています。原因としては、コレステロールを調節しているリポ蛋白の型などが誘因であったり、何かの微量元素の摂取量や免疫反応が関係しているなど様々です。薬を使った時の反応にも違いがあるようです。
安定剤や眠剤で認知症が進行するのかと聞かれることがありますが、どうやら影響はしないようです。うつ病の場合に我慢していると病状を悪化させますので、薬の我慢しすぎはよくありません。
はっきりしませんが、アルミニウムの摂取量はアルツハイマー型認知症に関係しているかもしれません。鍋や飲料などで習慣的に多く摂取した場合に全く問題がないとは断定できません。実は薬品の中にもアルミが含まれているものがあります。長期間飲んでも大丈夫とは言いきれません。 神経質にならない程度に制限したほうが良いかもしれません。
コレステロールが高い人については、コレステロールの治療で認知症が減る傾向があるようです。コレステロールが低い人への効果は分りません。
認知症の薬(アリセプト)を時々処方していますが、本来は予防薬、進行防止薬ですので、飲んだから良くなるわけではありません。でも10人に一人くらいは非常に効果を認めます。
また、ワクチンでかなりのアルツハイマー病が予防できるらしいと言われていますが、まだ意義が不確定な状況です。麻疹などとは病気の種類が違うのでワクチンが効くなんて不思議な感じがしますが、効果が確定したら自分にも射ってみたいと思います。
認知症の治療薬は限られていますが、精神的な症状が中心になれば、例えば抗うつ剤、精神安定剤はよく使われます。認知症とうつ病は混在しますので、初期には見分けがつかないこともあります。
薬の治療よりも、介護や管理のほうが大きな問題になることもあります。特にお金を盗んだ、盗まれたといって警察沙汰になる場合や、暴力行為、行き先不明になる場合などは、どうやって管理するのか悩むことも多くなります。
最近は介護保険の判定も厳しくなっていますので、毎日ヘルパーさんに来てもらえるのは限られた人だけです。また、家で危険だから病院で面倒見てもらおうとしても、保険の制限が厳しくて追い出されるかのように退院をさせられる場合もあります。病気が進行して事件や事故を起こして初めて入所が認められるというのが現状ではないでしょうか。
事故を最小限に止めるように、限られた治療法と制度を利用していかざるをえません。
認知症であることが疑われたら、医療機関を受診するとともに介護認定を役所に申請し、認定を受けるべきです。異常行動などは恥ずかしがらずに報告しないと、不当に認定が軽くなります。
ケアマネージャーには認知症が進行する中で、例えば事件を起こしそう、ケガをしそうといった事象を伝えて下さい。たくさんの認知症患者を経験している人に相談すると、次に何が起こるのか、どのように対処すべきかを教えてくれます。
平成20年1月 診療所便りより