3月の東日本の震災では、津波が激しい被害をもたらしたようです。テレビで見るなら驚くだけで済みますが、目の前にしたら恐怖で逃げることもできないかもしれません。流される家の中に人がたくさんいたでしょう。激しい感情が湧き起こりました。人が死んでいく映像です。あのような映像を繰り返し放送して良いのか疑問に思いました。  

当院も災害への準備を再検討しました。災害において当院が果たせる仕事は知れていますが、ケガや往診への対応力を上げておく必要がありそうです。持ち運び可能なエコー検査器具、心電図器具、麻酔や消毒液、点滴器材のストックなどは、無駄を覚悟で準備しておこうと思います。



 待合室での感染予防 
私宛には、毎月のように病院設計の案内が届きます。おそらく建設会社が医者の名簿を基に送っているのでしょう。   

例に出された病院の外観は美しく、まるでホテル並みで、当院とは比較になりません。でも待合室については感染予防の観点から設計されていないのが気になります。考えてみれば市内の病院も多くはそうです。風邪の人も花粉症の人も隣りあわせで長時間待っています。感染防止のために、接触させない工夫をすべきではないでしょうか。  
いろんな科が揃った大きな病院や、患者数を集めないといけない科の場合、現実的に待合を分けるのは難しいかも知れませんが、車で待機してもらう等の最低限の工夫は望まれます。待ったことで感染症を拡げる結果になりますので、文句を言わずに待つ患者さんが偉いとは思いません。    

インフルエンザの流行に対し、当院は感染防止に努めました。診察室の位置、待ち時間、換気の方向も考えて、院内で感染症をうつさないよう工夫しており
ます。

感染予防は、地震や津波への対策と同じく危機管理(起こりそうなことを想定し、対策を練って準備する)のひとつです。「病院だから、他の人と接するのは当然で仕方ないでしょ。」という考え方もありますが、「海岸近くに住むから津波は仕方ないでしょ。来たら2階に登ればいいもん。」という考え方と被害こそ違えども、似ているかもしれません。

過剰に対応しようとは思いません。同じ敷地内で呼吸し、診察のために触れば、何も感染させないというのは無理です。「津波を防ぐために高さ100メートルの堤防を作る必要がある!」と考える人はいないと思います。防護服を着る、隔離する必要があるような感染症は稀で、そのような対応をしようとは思いません。その必要がある場合は、そもそも病院で感染させないために診療を止めないといけません。それも危機管理の考え方です。

「原子力発電所には高さ5メートルの堤防があれば大丈夫。」と考える人もいないでしょう。・・・いえ、いたようです。しかも、学者や政府、会社の責任者達が、それで納得していたようです。害の大きさは違いますが、その考え方は感染症患者が多いと解っていても平気で待合に患者さんを待たせている病院と同じような印象を受けます。




平成23年4月 診療所便りより                 (2011.04.30up)