熊本城マラソンが開催され、多くのランナーが参加されました。市内を走るランナーが増えましたし、街に人が集まり、経済効果もあったでしょう。
でも賑わうばかりではなく、逆に通行を遮断されて客足が遠のいた店もあったそうです。来年以降も大会は続けられるのでしょうか?
とにかく大きな事故がなくて幸いでした。救護員が配置されていても、助かるとは限りません。死者が出れば大変です。
マラソンと心停止
長距離走では稀に心臓が止まる人がいます。2009年の東京マラソンだったと思いますが、お笑いタレントの太った方が倒れて急死に一生を得たと報道されたこともありました。 アメリカにおける統計では、およそ20万人のランナーに一人の割合で心臓停止があったそうです(N Engl J Med 2012;366:130-140)。
その中で助かったのは約3割、事前に心臓病が判っていた方や、除細動という不整脈の治療が成功した場合は助かる確率が上がるという統計が出ていました。つまり、7割の方は回復することなく、そのまま亡くなっているということになります。
20万人に一人が多いのか少ないのか判りませんが、急死を避けるために、激しい運動をされる方は定期的に心臓の検査をしたほうがいいと思います。 簡単で安全にできる検査の心臓エコー、24時間心電図などは望まれます。心臓の筋肉の厚さ、動きの異常、弁膜症の有無などはエコー検査で、不整脈の発生具合は24時間心電図で判定できます。 CT、運動負荷、カテーテル検査まで必要な方は少ないと思いますが、狭心症などの異常が疑われる場合は考えるべきです。
病気が判っていれば、対処できる可能性も高まります。 運動で誘発される急死の原因の多くは、不整脈と心筋梗塞だろうと言われています。両者が合併して発生することも考えられます。 普段よりも心臓に負荷がかかったことで発生すると思われますので、競技としてするような無茶な我慢さえしなければ、発症は少ないのではないかと思います。
マラソン=とても健康というイメージがありますが、生活習慣病の予防の目的では、マラソンのように激しく走る必要はありません。そもそも長距離走で寿命が延びるという確実な統計はありません。軽い運動で充分です
診療所便りより (2012.04.30up)