マクロライド
(マクロライドと幽門狭窄)マクロライドは、抗生物質の一種です。クラリス、エリスロ〜といった薬が代表的で、内科小児科では頻繁に処方されます。例えば臨床的な判断でペニシリン系抗生物質を処方したのに全く改善がない場合、通常はマクロライド系抗生物質の適応ではないかと疑うのが一般的です。病原体の種類によっては、系統の違う抗生物質が必要だからです。 ところが乳児に対しては、胃の出口を狭くする危険性があることが報告されています
(BMJ2014;348:g1908)。
そうなると、妊婦さんや授乳中の方にも危険と考えるべきでしょう。妊婦さんへの投薬の際に参照される国立生育医療研究センターの発表では、現在のところマクロライド系抗生物質は使用可となっていますが、今後改定されるかも知れません。
(一般的な副作用) 古くから知られている副作用は、下痢や食欲不振です。代謝経路に特徴があるので他の薬と併せ飲みになる場合があり、心臓関係の薬を使っている方では確認が必要です。稀に不整脈が誘発されることがあり注意が必要ですが、実際は滅多に経験しません。
(持続投与の是非) 慢性の副鼻腔炎や気管支の病気の方に、長期間使う場合があります。病状が安定化することが偶然解り、全国的に処方が増えました。でも耐性菌の誘導は懸念されます。副鼻腔炎のように症例が多い病気で長期間使うと、感染症の管理や公衆衛生的な見地から考えると不道徳な行為となるでしょう。安易に使われすぎる傾向があったかも知れません。
(アジシロマイシンの問題) アジスロマイシンという薬は、肺炎治療の標準薬のひとつでした。1〜3回飲めば1週間くらい効くので、例えば往診中で点滴ルートの確保が難しい、または認知症で内服が不確実といった理由で目の前で飲んでいただいたり、以前はかなり頻用していました。味にも工夫がしてあって、クラリスロマイシンより飲める人が多い点も特徴でした。 国内で別な系統の抗菌剤(ニューキノロン)が乱用されるので、比較的望ましいと考えられた面もあります。
しかし菌の状態の調査によれば、アジスロマイシン発売後、マクロライド系に耐性の菌は確実に増えており、通常量より多めに処方する必要が出てきています。 アジスロマイシンが耐性菌を誘導してしまった可能性は高いと思います。また、もしかすると致死的不整脈を誘導する直前で気づかないままの方も多かったのかもしれません。効果は期待できる薬で、死亡率を減らします(JAMA.2014;311(21)2199-2208)が、偏重は良くないと思います
(乱用に注意) マクロライド系抗生物質はペニシリンなどと違った作用を示すこと、気道や免疫細胞に薬が集まることなどから、例えばマイコプラズマ肺炎や百日咳などでは便利な薬です。使いすぎると薬の効果も弱くなりますので、副作用に用心するとともに乱用しないことが望まれます。ただの風邪と思われる時に使う薬ではありません。
診療所便り平成26年6月分より・・・(2014.06.30up)