幸福度と寿命の関係
幸福か不幸かによって寿命が違うかを比べた論文が発表されました{Lancet dx.doi.org/10,1016/s0140-6736(15)01087-9}}。この論文の結果では死亡率と幸福の度合いは、あまり関係ありませんでした。ドラマの見過ぎか、世間話の影響なのか、不幸に見舞われた方のほうが無理をして早死にするイメージがありましたが、そうとは言えないようです。世間話は話半分で聞いておくべきと、改めて思いました。
この論文で幸福か不幸かは、対象者の申告で決めています。申告が正確なのか、客観性を保証できるものではないように思います。 収入や資産などの金銭的安定度は調査すれば分かるかも知れませんし、職業に満足しているか、家族関係が良好かどうかなども、およそアンケート内容を信頼できるとは思いますが、幸福度には主観性、相対性がありますので、申告だけでは曖昧と思います。対象者の感じ方によって、意外にこの論文とは違った本当の結論がありうるかも知れません。
論文の結果通りに解釈すれば、自分が幸せと思っていれば、少なくとも他の人より早死にはしないと思われます。そして、もし自分が不幸と感じておられたら、仮に本当に不幸であっても、寿命だけは幸福な人と同じと読み取れます。これは都合の良い考え方かも知れませんが、多少の精神的救済にはなるでしょう。
もし御自分を不幸と感じておられる方が、「いや、それでも自分は難民達よりは幸福なんだ。神様に感謝しよう。」といった考え方をするか、あるいは現状を悲観ばかりしていたらどうなるか、その違いが気になります。 気にはなりますが、この分野の研究には限界があり、まさか一般の市民を人為的に不幸にして、幸福な市民と比較するような研究はできません。この種の研究は、最初から非科学性をはらむものでしょう。
加えて、医療体制、健康保険制度が統一された環境の中での比較と、医療体制が崩壊した地域との比較では、最初から結果が違うだろうと思います。紛争地域で、明らかに危険な場所では、間違いなく平均寿命も短いはずです。幸福の条件がそもそも違います。今日の我が国のような、稀に見る幸福な状況の中の限られた条件下では、今回の論文のような結論もあるのかなと考えます。
メロドラマの世界では、次々と不幸に襲われるヒロインが短命に終わることがあります。でも、あれは虚構の世界の話で、気にされないほうが良いです。特に愛憎関係がどろどろした韓流ドラマは、観るだけで人に悪影響があるような気がしてなりません。
診療所便り 平成28年2月分より・・・(2016.02.29)up