子宮筋腫の治療法 


私は年に5〜6人子宮筋腫を見つけます。出血が激しい人は婦人科に行かれますので、私が診断するのは無症状か貧血のある方です。


少しずつ生理出血の量が多くなると、変化が微妙なので本人は気がつきません。もともと元気な方は貧血があっても疲れないようです。健康診断や風邪などをきっかけに高度の貧血が分って子宮筋腫が見つかるのが多いパターンです。似た病気の子宮腺筋症との区別は難しいので、MRIを撮影して婦人科に診断してもらうことになります。


以前は手術しか治療法がなかったのですが、最近は変りつつあります。ひとつは腹腔鏡(カメラみたいなもの)を使って傷を小さくしようという術式。もうひとつは高周波電極を使って、開腹せずに砕いて取る方法。さらに子宮動脈を塞いで筋腫を血流不足にして小さくしようという方法、超音波で体の外から焼く方法まであります。


手術すると、多くの場合は周辺の組織と癒着が起こります。最近は癒着予防のメッシュを入れることもありますが、全方向に癒着を防止することはできません。腸管と癒着すると、長いこと腸閉塞の後遺症に苦しむこともありえます。さらに、メスを入れる行為は常にリンパ液の流れを止めてしまう可能性もあります。婦人科の手術の場合、程度の差はありますが、後遺症として足の浮腫みやだるさが誰でも起こりえます。その他にも予想できない感染症などがありえますので、手術しないならばしないに越したことはありません。 


もし安全性が確保されるならば、一般的には開腹手術をしないほうが後遺症は少ないはずです。でも腹腔鏡手術の場合、やはり視野を確保しにくい関係で、かえって危険度が高いこともありますので、手術創が小さければ良いとは限らないようです。子宮動脈を塞ぐ治療法も、やりようによっては一気に筋腫の組織が壊死に陥って、大出血を起こす可能性はあります。そのような問題は、徐々に改善されていくだろうと思いますが、まだ誰も手術ほど経験を積み上げてはいない状況ですから、新しい治療法に飛びつくのは必ずしもお勧めはできません。


県内では未だ手術が主流のようですが、子宮筋腫は癌ではありませんので、やがて手術しない方向に変ると思います。








  診療所便りより 平成19年6月    院長 橋本泰嘉