禁煙パッチについて
禁煙の補助薬であるニコチン含有パッチに保険が使えるようになりました。ただし熊本市内で保険が効く医療機関は、熊本機能病院や日赤などの限られた施設に限定されています。医療費の窓口負担が1割の方の場合は保険を使った方が確実に安くなりますので、受診してみられてはいかがでしょうか。
自己負担が3割の方や仕事をされている方は、金額もあまり安くなりませんし、時間的にも受診しにくいかもしれないと思います。なぜ施設の制限を設けたのかは、予算の不足が主な理由らしいのですが、若い人ほど禁煙の意味はあるはずなのに、わざわざ受診しにくくしているようで残念です。国は禁煙に対してそれほど熱意を持っていないのかもしれないとさえ感じます。
禁煙パッチは当院からも処方できます。すぐ処方できますが、調剤薬局の支払いには保険が効きません。料金ですが、3割負担の人の場合は、保険を使っても使えなくても支払い額に大きな差はなく、期間中の合計で2万円くらいです。もし禁煙できれば、金額以上の価値があるはずです。
パッチは商品名をニコチネルTTSといいます。大きさが3種類あって、最初は大きなものから徐々に小さくしていくことでニコチンの量を減らしていくのがやり方です。もし大量に吸っておられたら、禁煙してパッチを貼った時点でニコチンの量が急に減った感覚になり、より辛くなるかもしれません。少しでも本数を減らしておいたほうがやりやすいでしょう。
以前は呼吸器の専門の先生にはヘビースモーカーが多くて、
「君ね〜、禁煙しないと癌で早死にするよ。」
と、タバコをふかせながら説明しているのを見て、説得力がないなと笑ったものでしたが、私が処方して成功した人も7割くらいで、自分の説得力にも限界があると感じます。癌の手術や心筋梗塞などの大きな病気をした方は、さすがに成功率が高いようですが、それでも100%ではありません。
ご本人の意欲が最も大事だと思いますが、心理的アプローチも必要です。こまめに連絡して励まし、家族との関係が良好な時にはほとんど成功しています。電話してもうるさがられるような時は、ちょっと成功率が下がる印象です。
賭けも励みになっていいのですが、賭け方を考えなければいけません。禁煙に失敗したらお互いに何かを出しあうようにすると、足を引っ張ってチャラにしようとされかねません。そうしないように例えば、一人禁煙に失敗したら本人は10万、仲間は1万円を神社の賽銭箱に入れると決めると、一人脱落するたびに支払いが増えて、誰が禁煙に失敗しても儲けるのは神社だけですから、お互いに協力しようと考えるでしょう。この場合、金額が大きいほうが効果的です。
少々きびしい提案と思われるかもしれませんが、宴会を禁煙にすると効果的です。アルコールで抑制が取れた時に、手持ち無沙汰で喫煙を再開するのが多いパターンです。会の案内に禁煙であることを盛り込み、会場と相談して喫煙所自体を撤去しておくくらいしないと、協力的でない喫煙者が(本人はその気がなくても)禁煙の邪魔をしてしまいます。禁煙は、せっかくの宴会の雰囲気を壊すと思われる方もおられるでしょうが、タバコの害のことを思うと行き過ぎた提案ではないかもしれません。
診療所便りより 平成18年7月