借金も額が大きくなると、借りたほうの立場が強くなります。大騒ぎだったギリシアの借金問題、まだ解決はしてないものの、どうやら契約のやり直しが成立し、支払いが先送りされつつあるようです。 
ユーロ圏は、経済面のバランスに相当な矛盾をはらんでいるようです。ドイツ企業に利益が集中し、南欧が借金にまみれる構造が今回の危機の主因かも知れません。
ギリシア政府の態度も、私には理解不能です。金を貸す際は、生真面目な人だけを相手にしたほうが良いでしょう。そして借金したら、逆にギリシア人のように考えたほうが良いのかも知れません。     


  抗うつ剤と奇形      

一般に妊娠中の薬剤使用は望ましくありません。でも、妊婦の病気の症状が強い時は、やむをえず薬剤を使わざるをえない場合もあると思います。妊婦の生命の危機や妊娠の維持さえ危ぶまれる場合は、もちろん同意を得てからの話ですが、より重大な問題を重視すべきです。抗うつ薬に関して、最近発表がありました(BMJ2015;350:h2298), (BMJ2015;351:h3190)。   

これらの研究は、主にSSRIと略される比較的新しい抗うつ薬を調べています。ふたつの論文だけから判断すれば、最近の抗うつ薬は妊婦への害は少ないが、胎児の奇形は少し増えるかも知れないという結論になりそうです。抗うつ薬といっても種類は多いので、どの薬剤でも安全性や危険性が同じとは言えません。必ず各々の危険度を確認する必要はあります。その際は、日本産婦人科学界や国立成育医療研究センターの情報などが参考になります。なんとなく向精神薬なら、胎児の脳に障害が出そうな気がしますが、そのような記載はありませんでした。 

概して言うなら、害が出るとしても微妙な違いしかないようですので、妊婦の精神状態が極めて悪いなら、薬を安易に中止すべきではないと考えるべきです。薬の害を気にしすぎ、妊婦の状態は顧みないといった極端な考え方は避けるべきでしょう。妊婦の状態によって個別に判断すべきもののようです。妊婦や胎児の生命が維持され、妊娠の安定的継続が可能、胎児の発育が維持されることなどを大きな目標に判断すべきと考えます。   

ただし、害が多くないから妊娠中も積極的に薬剤を使おうという理屈は成り立ちません。奇形は、たとえ軽くても重大な問題です。薬剤と関係なくても、奇形は発生します。生まれた子に奇形があった場合、薬のせいか自然発生か区別は難しいですが、薬剤を何か使用していたら、おそらく非常に後悔することになるでしょう。研究データがどのような結論であっても、完全に納得できるはずはありません。取り返しのつかない失敗をしたと感じるように思います。
面倒でも、時間をかけた説明、記録や手続きを経た薬剤使用を目指すべきです。  
  


 平成27年9月 診療所便りより・・・(2015.09.30up)