憩室 


憩室は消化管などにできるクボミです。できる理由は分かりませんが、少なくとも憩室があるから病気とは言えません。高齢者では全く持たない人が少ないくらい、よく見かけます。大腸検査で数え切れないほどの憩室を見つけることもありますが、だからといって必ずしもその人がお腹の症状が多いとは限りません。


症状が出るのは炎症を起こして痛みが出たり、出血した場合だけです。 食道に憩室があっても症状が出ることは稀だと思いますが、腸の場合は腹痛の原因として非常に疑わしいことはよくあります。ただし確定できることは多くありません。憩室炎の時は、憩室が炎症で破れやすくなっている可能性がありますので、大腸検査自体が危険をともなうからです。


稀には自然に破裂することもあるとは思いますが、おそらく患者さんは外科に直接行かれますから、私自身は経験したことがありません。 大腸からの出血は憩室からの出血が多いのですが、穴が小さいため、どこから血が出ているのか判断できない場合も少なくありません。 


硬い粒が入るといけないかも知れないという想像から、昔は専門家に言われるままマメやポップコーンを制限するように指導していましたが、これは必ずしも根拠がなかったようで、最近の報告によればマメ類を制限しても炎症を予防できないということです。 


稀な例だと思いますが、膀胱の中に憩室ができて、さらにその中に癌ができた患者さんを診たことがあります。過去の記録を調べると、患者さんは血尿の精密検査のために泌尿器科で膀胱鏡検査まで受けていたのに憩室しか見えていませんでした。憩室の内部は覗きにくいので中までは確認できなかったようです。やがて憩室を埋めて腫瘍が盛り上がったため私でも発見できたという経緯でした。 一般的には憩室はそのまま変化しないことが多いと思います。 


できる理由も分りませんので、予防に関して指導できることはありませんし、あったから手術で取ったりする必要もありません。痛みがあって急性の憩室炎の疑いがある時には、スープ類だけの食事制限を勧めます。点滴や絶食のために入院が必要な場合もあります。



 診療所便り  平成21年7月より



浅い憩室(左)
袋状の憩室(右)