以前はマイナスイオンの宣伝をよく聞きましたが、最近あまり耳にしません。数年前までは、掃除機や空調機などの製品に広く応用されていました。どのような効果があったのでしょうか? リフレッシュ効果などと書いてありますが、信用してよいのか分りません。実は当院の加湿器にも、この効果があるはずなのですが、鏡を覗くかぎり私の顔はくたびれていくばかりで効果を実感できません。
医療機器として届け出た時は、マイナスイオン機器ではなく温熱治療機器として申請したそうですので、販売が認められてもイオンの効果が認められたとは言えないようです。はっきりとは言えませんが、サギに近いような気もします。でも無効だという証拠もありません。もし「〜機能搭載!」という製品を購入される時には時間をかけて判断されるよう、お勧めします。私も反省しています。
間質性肺炎
先日、間質性肺炎の患者さんを診察しました。ニコニコ笑って診察室に入って来られて「このごろ少し咳が出ます。」と訴えられましたが、診察してみると呼吸が止まりそうなほど重症で、すぐ入院してもらいました。ゆっくり炎症が進むと息苦しさに慣れてしまうようです。病状に気づいた私も、患者さんに負けないくらい青い顔になりました。何度か苦い経験があるからです。
間質性肺炎は細菌による通常の肺炎ではなく、何かに対しての炎症で肺の機能が障害される不思議な病気です。
ある患者さんに結核の所見が出たので、専門家の指示を仰いで抗結核剤を使ったところ、副作用で間質性肺炎が起こってしまいました。「専門家の指示だから」と言っても、言い訳でしかありません。呼吸状態が悪化し治療への反応が遅れて回復は難しいのかと心配しましたが、数ヵ月後にかろうじて回復しました。その間、私は患者さんに申し訳なくて、病室に入るのも辛く感じました。
別な患者さんで、下血でショック状態になった方が、脊柱管狭窄症と大動脈瘤と間質性肺炎、腎障害まで合併していて非常に困ったことがあります。脊柱管狭窄症の症状で痛み止めを使うとなぜか出血量が増えますし、腎臓が悪化することも注意しないといけないし、肺炎の治療薬でも下血がひどくならないか心配しましたが、綱渡りのような治療で乗り切りました。
薬が原因となる肺炎は漢方薬(特に甘草を含むもの)でも結構起こります。また、イレッサという肺癌の薬で多発したために、ひと頃おおきな問題になりましたが、この薬の場合は外人と日本人で反応に違いがあったために、欧米の結果から想像した以上に肺炎が発生しました。外国で評判の良い薬だからと急いで承認するのも怖いという例です。
薬以外の原因でも起こり、原因不明の例も多いようです。もしかすると常在菌に対する免疫反応が病気の原因かも知れません。肺癌が合併しやすいのも困った特徴です。時には肺癌に対する反応で肺炎を発症したのかと考えられる例もあります。ある患者さんのレントゲンの所見が激しいため、「こんなに影が多いと、肺癌ができても発見できないかも知れません。」と話していたところ、本当に肺癌が発生して急死されたことがありました。
間質性肺炎はレントゲン検査で分る場合もありますが、広範囲に薄く病状が出た場合には、普通のレントゲンではなくCTでないと見逃すことがあります。血液検査で肺の成分(IL−6など)が血液中にたくさん出ている時には病状が良くないと判断できます。ご自分が間質性肺炎であることに気づかないまま急変される方も多いので、呼吸苦がある時は念のため病院を受けたほうがよいと思います。
診療所便りより 平成19年5月
院長 橋本泰嘉