肝炎の感染予防
肝炎の予防法を時々聞かれますが、ウイルスの種類によって違います。感染経路には例外もありますので完全な予防は難しいのですが、一般的には以下の通りです。
A型肝炎は、食べ物飲み物によって感染しますので、流行地では手洗い、過熱などの食中毒と同じ対策が必要です。ワクチンもありますので、海外の流行地での勤務の前には接種が望まれます。
B型肝炎は、血液を介して感染しますので、血液に触れないことが大事です。ワクチンもあります。これによって、特に新生児が母親から感染する母子感染は非常に減りました。最近の発症は、輸血以外の経路による場合が多くなっています。
C型肝炎も血液を介して感染します。ワクチンはありません。感染している人の血液に触れないことが大事です。感染した可能性がある人は、定期検査することが望まれます。
D型肝炎は稀な感染症です。B型肝炎と同じ対応です。ワクチンは発売されていないようです。
E型肝炎は食品で感染すると思われます。今のところ食中毒とほぼ同じく、加熱処理(特に豚肉や猪肉)が重要です。ワクチンは研究中です。
性行為による感染率は低いのですが、ウイルスの種類にもよりますので、感染者の家族は主治医に確認して下さい。
蚊やダニに媒介される感染がどの程度あるのかは、以前から注意して文献を読んでいますが、データが少ないので解りません。おそらく全く媒介しないということはないはずです。
歯ブラシや髭剃りによる感染もありえますが、そもそも人の歯ブラシを使うことは少ないはずですので、よく解りません。
ハリ治療の際の注意は非常に重要です。ハリでC型肝炎に感染する人が多発したので、今はどこの鍼灸院でもハリを滅菌していると思っていましたが、いまだに感染はゼロではないようです。また、海外のミュージシャンなどの影響で小さいイレズミをする人がいますが、これも針を滅菌しない場合が多いようで、簡単に感染します。
「ウチは完璧に消毒してます。」と言われても、実際の消毒の仕方を確認したほうが良いと思います。鍼灸師やイレズミ職人は「消毒」と「滅菌」の区別がついていないかも知れません。
平成20年4月 診療所便りより