従来の放射線治療では、癌組織の周囲や皮膚への影響を避けられないので、照射の仕方をいろいろ工夫し、害を最小限にするように努力していましたが、それでも目的の場所以外に多少は影響し、後遺症が問題になります。
肺に当たれば正常の肺組織が壊され、肺炎を起こしてしまいます。想定より広範囲に肺炎を起こすと呼吸苦が出現します。
胃腸の場合は消化管粘膜の障害を起こして下血することもありますので、治療は成功したけど消化管からの出血が命に関わる可能性もあります。
これに対し、重粒子線は癌組織に限定して効果を発揮できる性格がもともとあり、より副作用が少ないと言えます。
現時点での大きな問題点は費用面の問題、保険適応になるかどうかです。設備に高額の費用を要する関係で、定価で言えば一回数百万円もかかるそうですが、これを保険収載すると保険財政への影響は大きいでしょう。
逆にこのまま全額個人負担だと財産をなくしてしまいますから、何かの補助は必要になるでしょう。民間の医療保険、特に癌保険に加入していないと現実的に治療を受けられない、そんな事態も考えられます。そんな治療行為に、国の予算を使うべきかという疑問も感じてしまいます。
新しい治療法ですから、海外の富裕層を対象に商品的な価値が期待できる面はあります。つまり成長戦略の一つになりうると考えられるわけです。そして多くの患者さんに使えば料金も下がってくる可能性があり、そうなると収入が増えることと国内の患者さんが使いやすくなる二面で良い効果が期待できます。
少ないと言っても体への副作用がないはずもありません。消化管粘膜への影響、発熱、倦怠感などの症状はあるはずですので、実際の治療に際しては、例えば入院しながら治療だけに佐賀に通うといった方法になるかも知れません。 でも、癌への治療手段が増えるのは良いことだと思います。
診療所便りより (2013.04.30up)