自転車通勤と健康
オリンピックが開催されたこともあるスペインのバルセロナは、美しい街だそうです。そこでは自転車のレンタル〜共同利用の運動があり、それによる健康への影響を調べた統計が発表されました。(BMJ2011;343:d4521)。
自転車の問題点は、交通事故に遭う可能性が高まることと、排気ガスを浴びてしまう点です。その点を差し引いても寿命が延びるのか、病気が減るのかを評価する必要があります。そして結果は、確かに良い効果があるというものでした。
東京あたりの移動は電車が中心で、大変な距離を歩かされます。都会の若者が車を購入しなくなっているそうですが、車を使わず、電車や自転車で移動する都会の人達は、地方の人よりも足を使うので健康になれるかもしれません。
熊本市では公共交通機関が発達できないので車が必要になり、結果として車中心になって運動不足になる傾向があります。ぜひ自転車を利用したいものですが、街中の駐輪場はすぐ満車で役に立ちません。特に市役所の駐輪場は、空いているのを見たことがないほどです。
自転車の意義を見直し、もっとたくさん駐輪場を作って、無料で自転車を借れるシステムを構築できれば便利と思いますし、市民の健康にも良い効果があるでしょう。ただし、事故には用心しないといけません。ブレーキのない自転車を走らせる人がいるそうですが、人への配慮が足りないと思います。もしスピードを出して走行したいなら、場所を選ぶ必要があります。
自転車に関する自治体の対応には一貫性が不足している印象があります。専用の自転車道を市の北部に作ろうとした時期がありましたが、自動車道と併用されていることや整備不足の問題もあって有効に活用されているとは言えないようです。政治的な要因もあったようです。意義が広く理解されれば、整備にも理解が得られるかもしれません。
自転車による運動は、寿命を延ばすことが複数の試験で確認されています。意外にも歩行やランニングでは、寿命に対する良い効果は必ずしもないかもしれないと言われています。現時点で、健康に確実と思われる効果を証明された自転車による運動を、政策として推奨することには意味があると考えます。
診療所便り平成23年10月分より (2011.10.31up)