インスリンポンプの効果
糖尿病の治療のためにインスリンを持続注入する機械は、インスリンポンプと言われます。外国製です。値段が高いので、リース形式で使うことが多くなっています。 時間毎のインスリン注入速度を設定して注射する、あるいは血糖値に応じて増減するという簡単な機械なのですが、特許が絡むので高い値段がつけられているように思います。
かつては安くて高性能の国産品もありましたが、市場から撤退しています。おそらく、特許を外国の企業に取られてしまっていること、日本人を対象とした市場の規模が小さいことなどが理由ではないでしょうか。インスリンポンプは主に1型糖尿病の方が使いますが、日本人は欧州人より1型糖尿病が少ないので、売り上げが伸びないのではといった考えがあるのかも知れません。個人的には、かっての日本製ポンプでも充分に実用可能で、現在のポンプにこだわる必要はない、少なくとも価格的に意義は低いと考えます。
通常のインスリン皮下注射とポンプ使用者の予後を比較した発表がありました(BMJ2015;350:h3234)。ポンプの方が寿命を伸ばすという結論でした。ポンプは上手く使えば血糖値が安定するので、低血糖が減ること、合併症が減ることが期待できます。主に低血糖を避ける効果により、寿命も延びるかも知れません。
ただし、持続で皮下注射するために、持ち運びが面倒です。機械は小型になってはいるのですが、携帯電話よりも重さはありますので、動きが制限されます。防水性の確保が難しく、入浴の際の工夫も必要です。 通常のインスリン注射と比べてコントロールが改善する傾向はありますが、中には悪化する方もおられます。全ての患者さんに有効とは言えません。
通常のインスリン注射も、効力が長いタイプの製剤が増えたことで、かなり一定して効果を発揮させることができます。製剤を適切に選び、御自分での血糖測定でも確認をすれば、HbA1cで6%台、低血糖発作も全くないに近いくらいコントロールできる方も大勢おられます。そのような方が、わざわざインスリンポンプに切り替える必要はないと思います。
リース形式ですから払う費用の問題や、機械の信頼性、血糖自己測定による管理が厳重に望まれるなど、患者さんのやる気と能力を必要とする点も欠点と言えるかも知れません。患者さん自身が判断する部分がかなりありますので、うっかり判断ミスをして不必要な量のインスリンを注入し続けたら、直ちに低血糖の発症につながります。
最近のポンプには低血糖を警報する機能を付けた製品も出ていますが、意識状態によっては警報が有効とは限らないはずですので、管理する人間の能力は大事です。誰でも使えるものではありません。でも、条件が揃えば推奨される治療手段です。
診療所便り 平成27年10月分より・・・・(2015.10.31up)