エボラ出血熱、デング熱の流行が問題となった本年でした。デング熱は既に複数の場所で流行しているので、一般的な感染症になったと考えるべきかも知れません。デング熱疑いの感染症は以前から時々経験していました。確定できなかっただけで、かなり前から流行していたのかも知れません。   
エボラ出血熱は治療法が確立しないと非常に困る病気です。手洗いなどの基本的な感染予防策を徹底し、流行を遅らせるしかないと思います。ワクチンができれば、衛生環境の良い日本では流行しにくいはずです。 


 癌検診の今後 

(今後の癌検診)癌から少量発生する物質を血液で検査する方法が開発されつつあります。既に報道で御存知の方も多いと思いますが、癌センターなどが研究を進めているそうです。開発が成功するか分かりませんが、うまくいけば少量の血液か尿を採取しての検診が一般的になり、今のように内視鏡、レントゲンを多数施行する必要はなくなるかも知れません。 
実際に使用可能となるまでには、癌から少量分泌される物質を正確に感知しないといけませんから、繰り返しの試験が必要でしょう。 

(被爆・診断能力の問題) 検査による放射線被爆は、できれば減らす必要があります。病気の管理が目的でない健診の場合、放射線によって癌が増えたりするようでは本末転倒です。被爆量の多いX線CTを健診で使う施設がありますが、この点で倫理的な疑問を感じます。 
現在の健診の診断能力についても考えざるを得ません。特に肺癌がそうです。レントゲンを使う今の肺癌検診は発見率が低く、レントゲンに写らない肺癌が多いので、治癒に結びつかない傾向があります。このままの体制ではいけません。
検査方法としてレントゲンを基本としても限界があります。もし血液や尿に肺癌細胞から分泌される物質を検出できるようになれば、早期の段階での治療が可能になります。そのような物質の多くは現時点では不確定と思いますが、可能なはずです。新しい方法に期待しています。


(DNA検査)健康薬品業者などが遺伝子を検査する商売も流行っています。現行の方法は、口腔粘膜などからDNAを採取して、簡易キットを使って病気になりやすい遺伝子があるか検査するものです。
ただし、例えば糖尿病になりやすい遺伝子配列は多数発見されているものの、遺伝子の組み合わせと個々人の運動や食事内容によって病気の発症は大きく違いますので、結局のところDNAを気にされても仕方ないように思います。画期的な薬が開発され、遺伝子に特異的な治療が可能になるまで、DNA検査に意義があるのか判りません。 
逆に乳癌など、特定の分野の癌については、将来の発症をかなりの精度で予見できるはずですが、心の準備ができていない人に癌の宣告をすることは人道的に問題ですので、通常は検査から外れているはずです。つまり、重要な検査は除かれていると考えることもできます。

(DNA情報の管理)個人情報の管理方法も問題で、おそらく会社は情報に基づいて「貴殿は糖尿病になりやすいので、このサプリメントを飲みなさい。」といった風に商品を売ろうとするでしょうから、個人情報を会社に明かさない工夫をすべきと思います。たとえば集団で検査し、個人を特定できないようにできれば良いですが、それを会社側が了解するかは不明です。   
今の時点では、このような遺伝子検査法は正確さに欠け、病気の予防に関して参考程度の意味しかありません。ただし、やがては精度が上がるはずです。費用や手間のことを考えると、今の人間ドックのような方式ではいけないと思います。



   診療所便り 平成26年12月分より・・・・(2014.12.31up)