
フェイスブック(インターネット情報サービスのひとつ)の影響で北アフリカの国々では反政府運動が起こり、中には政権が交代するなど、昔は考えられなかったようなことが起きています。
また、ソニーのゲーム機の関係から登録された個人情報が流出したそうですが、その数が一億人分と報道されました。信じられない数です。
情報通信の影響は非常に大きく、ある意味では便利さと引き換えに混乱が生じているとも言えますので、皮肉な感じもします。
骨粗しょう症の治療期間
近年の骨粗鬆症の治療薬の中心は、週に一回、朝食前に飲む薬で、「ボナロン、フォサマック、ベネット」等の製品名で発売されています。これらの薬は、大腿骨や背骨などの骨折を減らす効果が証明されています。
(薬の問題点)
問題点もあります。@抜歯の際に顎の骨を傷めることがある A全身の骨を強くするとは限らない、Bカルシウム代謝に悪影響を与えることがある、C食道炎を起こすことがある、D寿命を延ばす効果が曖昧、などが挙げられます。
顎の骨への害は、「顎骨壊死」と言われます。骨の代謝が狂って、顎の骨がもろくなる病気です。顎の骨が壊死すると歯を支えることができなくなるので、歯もいっしょに抜けてしまうことになりますし、物を噛むことが難しくなり栄養状態も悪化します。歯の周辺からバイキンが侵入し、壊死した部分に膿瘍を形成しやすいため、続いて肺炎や敗血症などの病気が発生することもあり、その場合は命に関わります。
カルシウム代謝への影響はめったに出るものではありませんが、脱水などの影響で急激に腎不全を起こして意識がなくなり、そのまま亡くなる人もいます。骨折の予防や歯の治療のために亡くなるなんて、考えたくもない事態です。薬によって寿命が延びるのかの検討が不足しています。もし寿命が変わらないなら、骨折が多少減ったとしても、そもそも治療の必要はないのではという考え方もあると思います。薬の値段が高いので、効果が明白であることは大事です。
(非典型的な骨折)
また、理由は解りませんが逆にわずかながら治療によって骨折が増える部位もあるようです(New Engl J Med 2011;364:1728-37)。普通は折れにくい箇所が折れるらしく、無理な力が加わりやすくなるのか骨の中に文様のようなものを作ってしまうのか等と推論されています。 その頻度は非常に少ないので、治療の利益のほうが大きいだろうと言われてはいますが、実際に自分が非典型的な骨折を起こしたら納得できないかもしれません。
(内服継続期間)
いつまで続けるべきかも解っていません。 5年間飲めば一定の効果があるので5年間で中止すべきという意見がありますが、やや根拠に乏しい気もします。 もし止めた途端に骨折したら止めたことを後悔するかも知れませんし、内服を続けたために変な部位を骨折したら、続けたことを後悔するでしょう。長期間治療を続けた人と、5年間くらいで止めた人の生存期間、骨折の頻度などを比べれば、はっきりした治療期間の目標が解るでしょうが、まだ決定的な統計はないと思います。
(治療効果の判定)
骨粗鬆症の薬は骨折の予防薬で治療薬ではないので、効果の判定は曖昧なものになります。骨折をしなかったら効果があったのだろうということになりますが、生涯大きな骨折をしない人も多いので、その方が元々丈夫だったのか薬の効果か、個々に判断することはできません。
薬の効果の目安は、骨密度の測定ではなく、骨の代謝の指標となる物質の値です。骨密度は変化を捉えにくいので、効果の指標には向かないはずですが、繰り返し検査する病院もあるようです。 骨代謝の指標は、近年は検査法が進歩して普通の血液検査で判るようになりました。 これで効果の判断はやりやすくなったものの、いつまで続けるべきかの判断には役立ちません。
専門家の間でも意見が一致してはいませんので、整形外科の先生に聞いても答えはないと思いますが、一定の指標はありますので、ステロイド薬の使用の有無、腎機能や骨折の既往の有無等を参考に、個別に判断すべきと思います。骨粗鬆症の薬は一種類ではありませんので、切り替えようと思われれば切り替えは可能です。 治療を受ける間は、抜歯や脱水の際には厳重な注意が必要です。
平成23年6月診療所便りより 2010.06.30up
