歩行の速さと健康との関係
歩行の早い人は遅い人より寿命が長いという統計が発表されました[JAMA.2011;305(1):50-58]。
健康でないと歩く早さは遅くなりますから、この統計は当然の結果を示しただけで、「だから歩け。」という結論にはならないと思います。ただし、歩行することで良い効果があり、寿命が延びた可能性がないとも言い切れません。
別な論文で、自転車運動の習慣がある人は、習慣がない人より死亡率が低かったという統計もあります。自転車は関節への負担が軽いので、スポーツよりも足を傷める危険性が少ないからではないかと解説されていました。この論文も、元気だからこそ自転車をこげただけかも知れませんし、解説の通りかも知れません。
運動と言うと歩くしかないようなイメージを持っている方が多く、急に長距離を歩いて膝が痛くなる、転倒するなどして結局は続かない場合のほうが多いような印象を受けます。糖尿病の療養指導の本を読んでも「運動の基本は歩行である。」といった内容が主流で、よく読んでみると「ただし、足や心臓の状態を確認してから・・・」などと書かれていますが、障害が発生して初めて自分には無理であったことが解るケースが多いように思います。
明確に証拠を持って言えるわけではありませんが、いろんな運動をされたほうが良いと思いますし、故障や事故がないことを優先されたほうが良いでしょう。散歩しないとダメなどという報告は少なくとも見たことはありません。歳をとるほど、歩行より柔軟体操の割合を増やしたほうが良いように個人的には思います。
運動に関する今の一般的指針は、
@全身運動をやったほうが良いことは確実、ただし
A歩行だけに限定する必要はなく、自転車や水泳なども良い。
B関節や心臓、腎臓などの状況と相談しながら、やり過ぎに注意しつつ、C必ず何かをやることが大事 だと思います。
私の個人的意見ですが、特に寒い時期は室内での体操が一番安全と考えます。室内での体操は退屈になりやすいという欠点がありますが、風にあたって肺炎などを起こす危険性は低いし、天気に関係なくできるのは良い点です。運動で関節を傷めては何にもなりません。
平成23年2月診療所便りより(2011.02.28up)