保険料雑感   

健康保険組合の財政状況は、どこも悪化しているそうです。民間企業保険の中には保険料が高騰したために、組合を政府管掌組合(全国健康保険協会)に移すところもあります。 


私は年間70万円以上健康保険料を払っています。請求書を見るたび目の玉が飛び出そうです。年末に当院が支払う職員分の社会保険料は、一ヶ月分だけで50万円を越えます。悪いジョークではありません。保険料を払うために生きていくつもりはないので、もっと安くして欲しいものです。経費に無駄が多く、健康に関係ないものに保険料を浪費するから財政が厳しいだけで、本来は相当な黒字ではないかと勘ぐりたくなります。   


財政の都合で、自治体や保険組合はジェネリック医薬品を半ば強制してきますし、在宅医療に比重を移すように指導しています。もちろん、外来治療でも無駄な検査、治療を繰り返せば同じことですが、入院費は多くの場合1日数万円かかりますので、費用のケタが違います。  


以前は大病院が医療の中心みたいに私も考えていましたが、病院は経営のために無駄な検査や治療をする傾向が確かにありますので、医療費の無駄を減らすために、在宅医療に比重を移す必要はあるようです。 都会には往診専門の診療所もあります。点滴や処方、血液検査だけのために、無理に病院に連れてくる必要はありません。


NHKなどで、在宅のまま最後を看取るシステムを紹介することも多くなりました。国の方針を受けてのことだと思います。病院だと、患者が亡くなりそうなのに何もしないわけにはいかない、いったん付いたものを外すわけにはいかないという流れで次々とチューブやモニターなどが装着され、濃厚な治療のパターンができあがる傾向があります。 


末期癌患者だから、痛みを感じないように眠ってもらおうと勧めても、家族が反発する、看護師さえ延命治療しないことを問題視する、結局は人工呼吸器を装着といった例も珍しくありませんでした。除痛より延命を第一に考えないなら訴えると脅されたことも多々あります。患者の苦痛は二の次でした。皆の意識が少しずつ変わってきて、今はそんなことは少なくなったと思いますが。 


当院でも最後まで往診で看取った方がおられます。どの家庭でもできることではなく、どなたか付っきりに近いくらい介護できる人がいないと難しい印象を持ちますが、在宅で最後を迎えることは、ほとんどの方にとっては自然であり、望ましいことは確かです。私自身も家族の負担にならなければ、家で死にたいと考えます。 


さて医療費に関連する話題ですが、最近アムロジンという血圧の薬のジェネリック(後発)医薬品が発売され、病院の多くは明治製薬の「アムロジピン明治」、日本ケミファの「アムロジピンケミファ」などの製品に変更しつつあります。  


ジェネリック医薬品に変更する理由は国の指導のせいもありますが、薬の効力に大差なく(微妙には違います)、値段が安いからです。ジェネリック医薬品は、添加剤に注意する必要がありますが、例に示した製剤は抗生物質などで実績がある会社の製品ですので、ブランドイメージも関係して採用されているのかもしれません。  


後発医薬品の場合、安全性試験が先発品ほど詳しくされていない点は欠点ですが、患者さんの負担額を無視して先発品にこだわるのも問題ですので、基本的には患者さんに選んでもらうべきかと考えます。情報は少ないのですが、知っている範囲でジェネリック医薬品の問題点を説明し、それでも希望される方は処方を変更したいと思います。  


健康保険制度を維持するためには、支出にあたる医療費を何らかの形で節約する必要がありますから、値段の安いジェネリック医薬品の採用もやむをえないと考えます。ただし、副作用に責任を持たないといけませんので、添加剤が同じであること、発売後に問題を指摘されていないなどの条件を満たすものだけを選択したいと思います。


ご存じないかも知れませんが、院外処方の場合は今年から薬局が勝手に薬を選んで良いという前代未聞の決まりが作られてしまいました。それではとても責任を持てそうにないので、当院は院内処方を続ける方針です。 




平成20年10月 診療所便りより (2012.02.15一部改編up)