肥満を放置する危険性
人間の脂肪には単にカロリーを貯めておく作用のほかに、ホルモンを分泌する働きがあることが解っています。ホルモン様物質の中には、動脈硬化を引き起こすものも含まれています。したがって、脂肪を手術で取り除けば動脈硬化も軽くなるのではないかと予想できます。
脂肪吸引や胃の縮小など、肥満の外科手術がテレビで紹介されています。お腹の脂肪の中に金属の棒を突っ込んで吸引するシーンは気味が悪いのですが、脂肪が確実に取れますから理屈にはかなっています。胃の縮小手術には胃を縫い縮めるか、リング状のものを付ける方法があるそうです。でも、これらは自然な治療法ではないので、術後の経過が気になるところです。
昨年アメリカとスウェーデンの研究が発表されましたが、それによると手術を受けた人は心筋梗塞などの発生率が下がるため、死亡率が低下する傾向があるようです。脂肪が出す有害物質(悪玉のアディポサイトカイン)が減る関係で、動脈硬化の進行が抑えられるためではないかと思います。
代表的なアディポサイトカイン(上3因子は悪玉と思われます)
名前 |
働き |
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TNF−α |
インスリンの阻害 |
炎症反応を活性化 |
PAI−1 |
血液を固める |
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HB−EGF |
血管を細くする |
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レプチン |
食欲を抑制 |
カロリー消費の低下 |
アディポネクチン |
インスリンの補助 |
動脈硬化の抑制 |
研究の結果は、脂肪の存在が害を及ぼすことを証明していますが、脂肪が全くないほうが良いと言っているのではなく、過度に肥満があると動脈硬化を進めるので、脂肪を減らしたほうが良いと考えるべきでしょう。
ただし理由は解りませんが、この研究では手術した人のほうが自殺などによる死亡率は逆に増える傾向もあったことから、手術に頼るのは考えものです。麻酔によって思わぬ害が生じて、かえって後遺症を残すことも考えられます。もっと自然な治療法が、お勧めです。
自然な治療法となると食事療法、運動療法ですが、我慢を必要とするために、なかなか成績が出ない(やせない)ことが問題です。行動療法の手法を取り入れて、自分で意識改革をする必要があると思います。
薬物療法もあります。高度の肥満には保険が効く薬もありますし、それ以外も海外では既に発売されています。食欲を抑える効果が証明されていますが、やせたいと願う若い女性に乱用されて思わぬ害が出やすい薬ですので、日本では安全性などの問題を検討中といった段階です。
現時点では、食事療法でダイエットを目差していただきたいと考えます。当院も、その手助けをいたします。