鎮痛剤と血栓症 

鎮痛剤には多くの種類があり、近年は薬剤が作用するCOX(コックス)という蛋白の研究が進み、胃潰瘍の発生が少ないCOX2選択性の高い製品が主流になっています。 古い製品では胃潰瘍を起こし、吐血されることも少なくありませんでしたが、最近は胃薬が必要ないと言われる製品も出てきました。 

ただし、COX2選択性だけで潰瘍の発生が決まるわけではありませんので、選択性が高いか低いかは参考程度の意味しかないとも思えます。胃に限らず、解熱鎮痛剤は消化管の粘膜に障害を与えやすい傾向があり、常に消化管出血の危険性を考えなければなりません。  

鎮痛、解熱薬の多くは、腎臓にも悪影響があります。 血液透析間近の方に鎮痛剤を使うと激しい副作用が出て、腎機能にとどめをさしてしまう可能性もあります。 また、腎機能は年齢に応じて誰でも低下していくので、それに応じて解熱鎮痛剤も減らす必要があります。  

もうひとつの問題は、血栓形成です。薬剤によって差はありますが、抗炎症作用と血を固まらせる機序にはもともと関係があり、あらゆる鎮痛剤で血の塊を作る確率は高まります。新しい製品でも、血栓症に関しては安心できません。 製品を開発する試験中に心筋梗塞を発症される患者さんが続出した薬剤もあります。 風邪薬、頭痛薬も主成分は解熱鎮痛剤ですので、ご使用は最小限にされたほうが良いと思います。 

痛みを我慢せよというのは無理な話ですが、使い過ぎておられる方も多いと思います。 証明が難しいだけで、実際には鎮痛剤によって脳梗塞を起こされた方も多いのかも知れませんが、日本人の大規模試験のデータがないので、明確なことは言えません。鎮痛剤には依存性もあると言われていますので、最小限の使用を心がけるべきと思います。

抗生物質や糖尿病の薬などは自分の判断で減らすことは危険ですが、解熱鎮痛剤の場合は減らして害が出ることは考えにくいはずです。処方医や薬局に確認しながら、減量されるほうが良いと思います。
   



 診療所便り平成23年10月より (2011.10.31up)