TPPの内容が新聞で解説されています。農業には相当な影響がありそうです。
今は産地を気にしながら食品を買う人が多いので、外国産の品が増えても県内の農家が壊滅するほどの変化は来ないと思いますが、農家の方達が将来への長期的な展望を持てるのか心配です。   
個人的には、価格が多少高くても、なるべく国産農産物にこだわりたいと思います。


  静脈血栓と癌        

(エコノミー症候群) 震災で避難所生活をされた方、または長時間の飛行機での移動の際などに、肺の血管が詰まる方がおられます。エコノミー症候群などと言われる病気で、主に足の深い部分に血流の停滞する状況があった時、血の塊ができて、それが足の血管を詰めてしまうと`深部静脈血栓症‘、肺まで流れると`肺梗塞’という病気になります。また、整形外科の手術の後、固定されたまま寝ていても同様の病気になる場合があります。 
深部静脈血栓症では、酷い場合は足に壊死を起こし、切断を要することがあります。肺梗塞は、大きく血管が詰まるとショック状態になって急死する場合がありますし、小さい血管が詰まった場合でも呼吸苦や胸の痛みなど、心筋梗塞とよく似た症状が出ることがあります。
  

(癌と血栓症) そのように足の深部静脈や肺に血栓や塞栓ができる方は多数おられますが、その方達の中で癌が見つかる人が多いことが、経験的に知られています。癌は血液の固まり具合に影響し、血の凝固が生じやすい傾向になります。それが静脈血栓の発生につながるのかも知れません。 脳梗塞の患者さんに癌の影響が疑われることもあります。これも同様の機序によると思われます。 

(血栓症と検査) ただし、血栓がある人の全員が癌を持つはずはありません。CTなどを用いて癌を探す健診に効果があるか、カナダで調査が行われました(N Engl J Med 2015;373:697-704)。    
深部静脈血栓がある方の癌の発見率は3-4%でしたので、一般の健診よりは高いだろうと思いますが、CTを使っても発見率は改善しないようです。通常の検査は望まれるだろうけど、やたらCTで検査する意味はなさそうです。
結論として、深部静脈血栓を起こされた方は、侵襲の少ないエコー検査や検便などで一定のチェックをすることが望ましいが、癌の合併率は限られているので徹底的に調べる必要はない、そのように理解します。 

(日本人の対応) 日本人の場合は、カナダとは生活習慣も人種も違いますので、同じことが言えるかは分かりません。でも、この論文を参照すると、無駄な検査を受けさせてしまうのは良くないので、血栓が生じたら必ず癌の検査をせよなどとは言えません。
そして例えば、足の表面に見える静脈が膨れてきても、癌になったと悲観する必要はありません。表面の血管と深い血管は詰まる部位が違い、意味合いも同じではないはずだからです。
でも、血栓と癌に関係があることは覚えていただいたほうが良いと思います。早期発見につながるかもしれないからです。 侵襲の少ない検査は、できれば受けたほうが良いと思います。
 



    診療所便り 平成27年12月分より・・・(2016.01.01up)