
糖尿病と果物
(果物の効果)・・・果物に糖尿病の予防効果・・・
果物の摂取が多いと糖尿病の発症率が下がると言われています。最近の統計でも、それが裏づけされました(BMJ2013;347:f5001)。果物や植物油、魚などを使った地中海型料理が欧米お勧め健康食です。でも果物には糖分が多いはずですので、不思議な感じもします。
(ジュースと果物)・・・ジュースは代替にならない・・・
果物ジュースで同じ効果があるでしょうか? 栄養素の含有量は同じはずですが、こちらは糖尿病を悪化させるという逆の結果が出ています。また、ビタミン剤を飲んでも統計上は糖尿病を減らせないと考えられています。したがって、おそらく果物の効果には鮮度や食物繊維の状況、あるいは吸収のされ方が大事ではないかと想像されます。
摂取の早さについて考えると、ジュースの場合は噛む必要がないので直ぐ飲み込まれますが、固い果物の場合は咀嚼のための時間がかかります。その差が大きければ、同じ栄養素を同じ量摂取しても、吸収のされ方は違うと思います。さらに飲みやすさの面から、摂取量自体もジュースは多めになるかもしれません。いずれにせよ、ジュースによって果物の代替をしようと考えるのは正しくないと思われます。
(脂質の含有量)・・・果物は油脂の含有が少ない・・・
バナナによるダイエットが流行した時期、いろいろな分析がなされましたが、バナナは油脂類をあまり含みませんので、結果的に脂肪分の制限が良い結果につながるのではないかという意見もありました。アボカドなどを除き、一般に果物は脂肪分の含有量が少ない傾向があり、また例外はありますが肉類と味の面であまり相性が良くない傾向もあります。肉と同時に摂取しない食物を食べている時間は、動物性油脂の摂取は減っていると思われ、それが脂質全体の制限につながる可能性もあると思います。
(日本食と地中海型料理) ・・・日本人での効果は不明・・・
このような結果が日本人でどうかは、今のところ不明です。古来の日本食なら食事中の脂質が少なかったので、地中海型料理よりもさらに糖尿病発症を抑えていたかもしれませんが、今の日本人の食生活は欧米化しています。似た結果ではなかろうかと思いますが、詳しくは解りません。
(治療中の果物の摂取)・・・治療中は制限を・・・
糖尿病の予防の時期ではなく、既に糖尿病が確実な場合は、果物に関する考え方は分けるべきと思います。現実に果物によって血糖コントロールが悪化する例が多いからです。熊本県の糖尿病患者さんは、冬場に河内ミカンをたくさん食べて血糖値を悪化させます。ミカンは柔らかいので短時間で摂取が可能であることや、大きな袋で売ってあるため腐らせるのがもったいなく、ついつい多量に摂取する傾向があります。1日10個くらい食べる方もおられますので、さすがにそれでは糖分の摂取が過剰になるでしょう。
食品交換表には、一日で摂取する果物としてミカンだけなら3個まで許可すべしと記載されていますが、河内ミカンに限ると1個程度が限界ではないかと、実際の診療の印象では思います。医者が1個と言っても、実際には1個で済まないからかも知れません。
脳卒中の発症率については、もしかすると果物の摂取で減らせるかもしれませんが、心筋梗塞については発症率に差がないだろうという日本の統計もあります(Diabetes Care Oct.29. 2013 Doi102337)。もしかするとインスリンなどを大量に使って血糖値をコントロールし、果物はいっさい制限しないほうが長期的な予後は良いなどという事象が今後判明するかもしれません。でも、今の時点では予防する期間と治療が必要な時では、果物の摂取の仕方を分けて考えないといけないと思います。
平成25年12月診療所便りより・・・・(2013.12.31up)