報道によれば、医療は産業として国が力を入れ成長を期待する分野だそうです。ただし、どうやら普通の医療ではなく、新薬の開発や移植など、海外から金を呼ぶ高度医療の話だそうで、一般的な病気に関して重視するとは述べていないようです。

iPS細胞を使った技術は、産業に発展しつつあります。既に米国にはベンチャー企業があり、数十億円単位で資金を集め効率良く細胞を作るシステムができています。巨額の金が動くので、暴走する研究員や抜け駆け行為が今後も出ると思います。 

金が動く新規産業も大事ですが、命に関係する分野は国の重要な仕事ですから、一般の医療も手を抜いてほしくはありません。予算が偏らないといいのですが・・・    


 ファーストフードと病気   
   
ファーストフード(ファストフード)は国によって様相が違います。日本ではチェーン店形式のハンバーガー、チキンフライ、丼や立ち食いの麺類を意味することが多いようです。健康に与える影響について、シンガポールの統計が発表されています(Circulation. 2012;126:163-165)。

その中で、週に2−3回ファーストフードを食べるだけでも糖尿病や心臓病の発症率が高くなるという、驚くべき結果が書かれています。私も子供の食べ残しのチキンやポテトフライをガツガツ食べますから、笑い事ではありません。 金を払って残すのはもったいないし、子供の頃から残さず食べるように躾けられていますので、捨てることに罪悪感を感じて、子供が残すなら自分の胃袋に押し込むことになるわけですが、それで病気になるなら考え直さないといけません。  

食生活のありかたは国によっても違うはずですから、シンガポールの統計は参考資料に過ぎないかも知れません。華僑の人達は、もともと外食が好きという話も聞きますし、ビジネス中心の街であるシンガポールと、どこか農村の食文化が残る日本とでは何から何まで食事が違うのかも知れません。ただし、外食のチェーン店は万国共通の味に近いと思います。その影響も、共通かも知れません。   

ファーストフードがなぜ良くないかについては、はっきりしたことは言えません。高カロリーで塩分も多く、野菜が少ないことは間違いありませんが、おそらく食事にかける時間が短くなり、濃い味に慣れることなど、副次的な要素があるような気もします。 また、旧来のライフスタイルならカロリーオーバーが問題にならないほど動き回っていたのに、運動が減った現代の生活の仕方で影響が目立つようになった面もあるでしょう。    

本当の理由が何にせよ、ファーストフードは遠慮されたほうが賢明です。本格レストランに行けという話ではなく、家庭料理が良いだろうという意味です。もちろん、自宅で冷凍フライドポテトをチンして食べればよいという意味でもありません。



診療所便り 平成24年10月分より (2012.10.31
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