
当院は診察室を4部屋設け、一般の疾患と感染症を同じ場所で診療しないようにしています。 待ち合いで待ってる間に風邪をうつすのは酷い話なので、病院側は感染防止を図るべきと考えます。
診察室を分けるのは米国では常識だそうで、先進病院の先生によると日本の病院の設計図を見せたら、「30年前のレベル」と言われたそうです。
診察の度に違う部屋に呼ばれて妙な気がするかもしれませんが、理屈のある方針ですので御了解下さい。
血圧のカテーテル治療
テレビでも報道されていましたが、腎臓の血管のそばを走る神経をカテーテルで処理し、血圧を下げる治療法が開発されています。
腎臓には体の中の水分、ミネラルなどの物質の量を調節する働きがありますが、その調節機構を調べるうちに、腎動脈周囲の神経をいじったら血圧が変動することが解り、治療に使えないかと考えたのでしょう。 理論は古くからあったのだそうですが、ベンチャー企業が特殊な道具を開発し、成績を高めたことで広まっているようです。
国内でも試験的に施行する病院が出ていますが、今のところ健康保険を使えない治療法ですし、器具も特許が絡んで自由には使えませんので、県内で実用化されるのは先の話になりそうです。
害は予想されます。血管内部から熱を加えるため、血管を焼き切ってしまう可能性があります。そうなるとお腹の内部で大出血が起こります。治療が成功して血圧が下がったのか、それとも出血したのか、CT等の確認を怠れないと予想します。血管の狭窄、周囲との癒着や周辺臓器の損傷を起こす危険性も報告されています。
それに神経をいじると、神経によって調節される反射がなくなり、血圧の下がり過ぎ、腎機能への影響などが予想されます。そのような危険を伴う治療法ですから、おそらく極めて重症の高血圧の方だけが対象になると予想します。
私がもし血圧が高くなって治療を受ける対象になったら、少し様子を見て治療成績や事故の発生率などを見極めてからにしたいと思うでしょう。
血圧の薬を毎日飲むのは面倒なことで、一回の治療で一気に改善するという話には魅力を感じます。治療を受けた方の中には、200近かった血圧が薬を飲まなくても正常値に近づいたといった方もおられるそうです。
薬が減ることによって、血圧治療の費用を減らす効果も期待できます{JAm Coll Cardiol.2012;60(14)}。
診療所便り平成24年12月分より (2013.01.01up)
