筋金いりの便秘?
便秘は、はたから見れば笑い話ですが、当人にとっては深刻な問題です。外見からは想像できないほどに腹が張り、なぜか精神的にも苦しく不機嫌になります。硬い便を出す時には肛門から出血する人も少なくありません。これではトイレに行くのも憂うつになってしまいます。
以前わたしが診察した患者さんの中に、大腸の形が全部分かるほどに便がカチカチに固まった人がいて、取り出した便を捨てると便器に当たって「カン」という金属音がするので驚いたことがあります。ここまで来ると自力で出すのは難しいので、薬の治療が必要です。
しかし安易に下剤を使うのは問題です。慢性的に使うと腸管の自然な運動を妨げ、体を冷えさせて症状を悪化させます。下剤の多くは、漢方で言う陰や虚の証に向かわせるものが多く、使用することで慢性化して薬を常用する悪循環に陥りやすい傾向があります。
便秘の専門家によれば、原則を守って適切に対処すれば、下剤を毎日使う状態から9割以上が抜け出せるそうですので、ご自分が「筋金入り」の便秘症と思っておられる方も、以下の原則を守ることできっと便通が改善すると思います。
便秘予防の原則
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生活のリズムを規則正しくするよう努力する。
食事と運動が不規則では腸管のリズムがおかしくなりますので、便通の改善は難しくなります。具体的な方法は工夫すれば色々あります。
A
水分や野菜が不足していれば徐々に増やす。
徐々に増やすことが大事です。通じに効くだろうと、タケノコなどの季節ものを大量に食べると、特に腸の手術を受けたことがある人は腸閉塞を起こすことがありますので注意してください。野菜は何グラム食べていますか?
B
冷たい牛乳やヨーグルトを適量食べる。
短期間飲んでみて効果がないとあきらめる人が多いようです。他の条件がそろえば、少なくとも便通を安定させることができます。
C
胃薬や血圧の薬でも便秘になることがあり注意。
恥ずかしながら私は胃薬のセルベックスや、ある種の花粉症の薬でひどい便秘になります。血圧やコレステロールなどの便には関係ないかに思える薬でも、あらゆる薬が便秘をきたす可能性がありますのでご注意を。
D 薬の調整
便を軟らかくする薬、便のボリュームを調節する薬、ガスを調節する薬、オリーブ油などを調節しながら徐々に下剤を減らす努力をする。食用のオリーブ油を1日さじ1杯飲むことで便が柔らかくなることもあります。水分を吸収して便にボリュームをつける薬もあります。腸内のガスのために症状がある人にはガスを調節する薬もあります。
お話を聞いていると、
「自分はこの@〜Dくらい全部試したわよ。どれも効かなかったわ。」と、おっしゃる人が多いのですが、よくよく確認すると自分では原則を外れていることを認識していない、一種の認知力の障害があることが多いようです。お悩みの方はご相談下さい。
寺原診療所便りより 平成17年5月