便潜血検査 

大腸がん検診の効果について、海外ではよく検討されています。便潜血検査を毎年受けて対処すれば、大腸癌の死亡率を3割減らせるそうです。ただし、検便では便の中に含まれる血液を検査していますので、出血がない病変はとらえられません。大腸の左側の病変は肛門に近い関係で検査に反応が出やすいのですが、腸の右側にできた癌を見逃しやすいことも問題です。

癌があるのに便潜血が出ない確率、便潜血があるのに癌がない確率は、明確なデータがないので誰にも解りません。そもそも、通常の内視鏡検査で癌がないと言われても、実は小さな癌があることは多いので、データの出しようがないとも言えます。

大腸の内視鏡検査の経験から言えば、ある程度の見逃しは避けられないと思います。検査の第一人者でも、大腸のしわの陰に潜む病変や、顕微鏡でやっと解るような小さな癌は発見しようがありません。しかも小腸の癌はほとんど手つかずに近い状況のままです。大腸検査に全く意味がないとは思えません。大きな癌を見逃す確率は低く、内視鏡を使って切除して完全に治癒することも期待できます。内視鏡検査で寿命を延ばせるという明確な統計はないようですが、大きな病変に限れば、効果は絶大です。


海外を中心に、CTを使って腸管を造影する検査が行われています。内視鏡は多少の痛みや危険性を覚悟しないといけませんが、CTでは痛みは感じなくて済みます。ポリープに限れば、内視鏡と同等の発見率が出るようになっています。でも、平坦な癌病変は発見しようがないでしょう。ただしCTは放射線被曝が大きな問題です。


癌の人に限って増える物質を探す試みは昔から続いています。大腸や小腸についても、そのような物質(腫瘍マーカー)が発見されるのではないかと思います。血液や尿を調べて癌を発見できれば、無駄な内視鏡検査を減らせるでしょう。


検査には限界がありますので、要は簡単に取れる癌を効率よく探すことを考えるべきだと思います。内視鏡検査を全員に受けてもらうと数万人に一人は事故(死亡)がありますし、検査費の財源が不足しますので、まず便潜血を検査すべきでしょう。検査で死ぬなんてことは、本来あってはならないと思います。 

脳卒中や心臓病予防のために血液をサラサラにする薬を飲んでいる方も、定期的に便を検査した方がよいかもしれません。結構な割合で潰瘍や消化管出血を起こす人がいます。これも、便の検査である程度検査対象を絞り込むことができます。ただし、急に発生した潰瘍から出血したら、対処する間もないかも知れません。

検便は検査料金が安く、安全で、寿命を延ばす効果がある検査です。






診療所便り 平成19年11月より・・・(2015.10.02up)
.