覚悟はしていましたが猛烈な暑さです。体調管理は万全でしょうか? 市内の暑さは耐え難いものがありますが、充分な休養と水分補給などに注意しながら乗り切るしかありません。
プールや温泉備え付けのボディシャンプーで痒みを訴える人がおられます。ボトルを交換したら痒みが収まることもあります。調べたわけではありませんが、ボトルの中で何か化学反応がおこるか、菌が繁殖するのかも知れません。
やはり石鹸類は自分専用のものを持ち、内容も早めに交換したほうがよさそうです。
アレルゲン検査
アレルゲンは、アレルギーの原因を意味します。鼻炎や皮膚炎を起すと、アレルギーの原因を調べられます。鼻炎の患者さんに聞くと、ほとんどの人がどこかで調べてもらっているので驚きます。研修医の頃は私も必ず調べていましたが、最近は原因が判明しても治療法が変わらないと思える場合は検査しません。無駄な検査を避けるためです。
花粉やハウスダストは空気中を飛んでいるので、原因が解っても避けようがありません。加えて、反応は連鎖的に広がっていく傾向がありますから、数年後には今の検査の結果が参考にならない可能性もあります。春先などの一定期間しか症状がない患者さんの場合は、あえて原因を確認する必要はないのでは?と、思います。
アレルギーによるものかどうかの推定は、鼻水や痰の中の細胞を染色すると可能です。症状だけで判断するのは危険ではありますが、病歴や治療歴を参考に、検査を省略するべき場合も多いと思います。治療法は検査結果に関係なく、ほとんど同じですので。
アレルゲンの検査は、皮膚に少量の物質を差して皮膚の反応を見るプリックテストと、血液の細胞の反応を見るリンパ球幼若化反応、そしてIgEという蛋白が出ているか調べるのが普通です。薬疹が疑われる時には血液検査をしていましたが、不思議なことに初期には反応がないことがあるため、結果が陰性でも何とも言えないことがあります。
シックハウス症候群のように、たくさんの原因物質が考えられる時には良い検査法がないため、多く見かける物質を選んだセット検査があるので、通常それを提出しますが、どれにも反応がなくて検査が役に立たないことが多くて困ります。微量で珍しい物質に対しては、クリーンルームで生活してもらって推定していくような手間がかかる検査法しかありません。
また、テストで強陽性なので食べたら絶対だめと言われていた子供が、平気でパクパク食べていることもあります。不必要な食事制限をしていたとなると、成長や精神に影響がありますから道義的問題が生じます。「だって、検査で危険だと思えたので・・」と言い訳しても、「あんたは検査の意味が解ってなかったのよ!」と言われれば、その通りです。
検査と症状が合致しないことは多く、どの検査も参考程度の意味しかありません。所見、病歴、検査が合致して初めて診断できるのですが、診断に成功する割合は高くありません。多くの場合は、結果は陰性だから原因は不明、じゃあ結局のところ検査は無駄だったの?と、言われてもしょうがない状況で終わるように思います。
ただし、アレルゲン検査はアレルギー疾患では必須と考える方もおられたようです。原因を確認しないと過剰診療や事故につながるという根拠で、徹底的に検査される施設もあります。検査が頻繁に行われた関係か、本当に必要な方に検査しようとしても、保険支払い側が認めないような妙な事態が生じてしまいましたが、医療保険の財政を考えると仕方ないかも知れません。
ショックを来たす病気と、減感作療法を受ける時、重症もしくは典型的でない症状で確認を必要とする方では検査が必要ですが、今のところ、それ以外はあまり患者さん側にメリットがありません。もちろん調べないと何かを勘違いする可能性はありますが、所見や病歴から治療を開始するのは、風邪の時に原因を確認しないのと同じで、道義的にも問題ないと思います。必要性を考えて、数パーセントの患者さんだけに検査をしていたら本物の専門家ですが、頻回に検査していたら病院の収入のためかも知れません。検査は最小限にすべきだと思います。
しかし、減感作療法が進歩してきたら、状況は一変します。安全にアレルギー反応を抑えることができるようになれば、どんどん治療する意味が出てきますから、アレルゲンを特定する必要も出てきます。口にアレルゲンを含んだカプセルを入れる治療は、海外では結構されているそうです。日本人にも安全と解れば、積極的に検査をして、症状がほとんどないくらいに治療することが可能です。それなら検査したほうが良いと言えます。
診療所便り 平成19年8月より・・・(2015.10.01up)