農協改革が進行中で、農協全中の権限が制限されるそうです。農協の実態を知りませんので勘違いかも知れませんが、報道を見る限り今回の改革は農家のためではなく米国の要請による動きで、日本市場(農地がらみの資産運用?)に米国の会社が参入しやすくするのが目的のように思います。
古い権限の撤廃は良いことで、資産を流動化することは経済活動を活発にする意義があると思います。土地も資産も市場で運用されれば、大きな金の動きには好都合です。そうしないのは閉鎖的と批判されるのではないでしょうか。
でも、世界的企業の影響力が強くなると、国内の法律の力が及ばない危険性がないかと気になります。運用されず、安定していることにも意味はあると思います。
ADVANCE試験
(血糖コントロールと動脈硬化) 血糖コントロールの意義を調べる試験で、ADVANCEと略される研究があります(NEJM2008;358:2560-2572)。血糖値や血圧のコントロールと、動脈硬化の関係を調べた研究です。薬によって血糖値の平均を示すHbA1cを7.3%から6.5%に下げても、心臓病や脳卒中は目立って減らないという結果でした。
試験期間の6年後の段階で、血圧や血糖のコントロールが遅れて影響していないか、つまり短期間で分からなかった効果が、後で出ていないか確認する統計も発表されました(NEJM2014;371:1392-1406)。結果は前回と変わりなく、血圧の治療は効果あり、血糖の治療では改善効果は認められないというものでした。 大まかに言って、動脈硬化に関しては血糖値だけ改善しても、有効性は高くないだろうという結論になります。
(合併症と血糖コントロール) この研究は狭心症や心筋梗塞、脳卒中に限って試験していますので、血糖の治療全体に意味がないという結果ではありません。実際、この統計でも腎症に関しては良い結果が出ていました。それに、HbA1c7.3%という値は元々低めですから、もっと高い血糖値では結果が違うかも知れません。
今回の発表は、どんな血糖値でも放置してよいという意味にはなりません。過去になされた他の臨床研究でも、合併症に関しては概して血糖コントロールの改善が有効でしたので、網膜症や腎症などには有効、でも動脈硬化はさほど抑制できないらしいと理解すべきでしょう。
(動脈硬化の予防) 血糖が高くて動脈硬化になるが、血糖を下げても動脈硬化を予防できないとは理屈の上では変ですが、それが現実のようです。
動脈硬化の予防は、なかなか簡単にはいきません。そもそも高血糖で動脈硬化が起こる機序も、明確に分かっているわけではありません。研究によると食後の高血糖は血管内皮を傷めるようですが、栄養分である血糖が直接内皮に影響するなど、奇異な印象も受けます。
ただし、食後の血糖値を上げない治療が確立すれば、もしかすると動脈硬化を予防できるかもしれません。食後の血糖をコントロールすることで動脈硬化を抑えることが解れば、治療方針は大きく変わるでしょう。今は、そんなことができるか曖昧です。
また、コレステロールが血糖と反応して変性し、血管壁に沈着するのが良くないという説も有力です。したがって、コレステロールと血糖の治療を両方すると効くかもしれません。学会の治療指針にも、糖尿病がある方の場合、コレステロールが高いだけの人よりかなり低い値(LDLコレステロールで120)を目標にするよう推奨されています。
指針には曖昧なデータの影響もあるので、指針に従った場合の効果が本当に素晴らしいかどうかは断定できないと思いますが、動脈硬化を抑制しようと思うなら、下げるべきものは全て下げ、やるべきものは全てやる覚悟をしたほうが良いと思います。
(血圧とコレステロールの問題) コレステロールを治療する必要はないという主張が、しばらくテレビなどで報道されました。血圧の治療に関しても、やりすぎないようにといった意見はあります。確かに、製薬会社と学者が結託したかのような妙な動きがあり、過剰に治療を勧める提言が目立っていました。
最近は再検証や反省の動きもあり、血圧の目標値も少し上がりつつあります。ただし、今度は病気の安易な放置がないように注意も必要です。「何もしなくて良いよ。」と言ったために将来の病気を発生させたら、道義的責任を伴います。
例えば2015年の段階では、血圧を下げれば卒中は減るし、下げすぎて卒中が増える(Jカーブ現象)とは言えないという報告が主流ですから、下げなくて良いという忠告は悪い結果をもたらすかも知れません。
血糖値のコントロールで合併症は減らせます。動脈硬化に関する効果は充分ないとしても、合併症予防には血糖コントロールが大事です。さらに血糖ばかりに気をとられず、動脈硬化に対して学会が指摘している血糖値以外の要因、たとえば血圧やコレステロール、生活習慣を、やはり忘れてはいけないと思います。
診療所便り平成27年4月分より・・・(2015.04.30up)