アセトアミノフェン
(安全性)アセトアミノフェンは解熱鎮痛剤です。子供の解熱剤‘カロナール’、‘アンヒバ座薬’、注射薬‘アセリオ’を始め、頭痛薬や風邪薬の成分として広く使われています。 例えばインフルエンザの高熱に対しては、‘ロキソニン’や‘ボルタレン’といった解熱鎮痛剤より安全性が高いと言われています。ケイレンの発生率などに違いがあるようです。 急な腹痛の際にも、‘ブスコパン’より安全に使えます。ブスコパンは脈を乱したり、尿を止めたり、ひどい方はショック死したりする場合もあります。 アセトアミノフェンは解熱鎮痛の標準薬のひとつです。
(標準薬の考え方) 標準薬とは、例えば救急外来に来られた初診の患者さんに使う際に、有効かつ安全な薬として推奨されるといった意味合いです。唯一無二の万能薬という意味ではありません。 過去にロキソニンやブスコパンを使用し、副作用が全くなかった人の場合、標準薬でないから使っていけないという理屈は成立しないと思います。いっぽうで例えばインフルエンザに罹患した場合、過去にロキソニン錠の使用経験がある方でも、今回使用すればケイレンが誘発される可能性もあります。何を使用するか、そもそも使用すべきかという問題には、個別の状況を知らないと明確に答えられません。あえて新規にアセトアミノフェン以外の薬を勧めるべきではないものの、他を禁止すべきとまでは言えないと思います。
(使用量) 体重Kgあたり10ミリ相当の量で使うのが標準ですが、慎重に使うなら、かなりの高容量でも使用可能ですから調節しやすい薬です。標準量でも急に低体温を来たす場合はありますので、害が発生しないか確認しつつ、例えば癌患者に麻薬の補助薬として使用することも可能です。
点滴の場合も、乳児には少し少なめにしますが、内服の場合とほぼ同じ量を15分かけて投与します。
(欠点) 欠点は稀に肝機能障害を起こすこと、低体温を来たす場合があること、切れ味鋭く効かない場合もあること、内服で胃を悪くする場合があること、そして疾患が限られることです。例えば慢性の腰痛、変形性関節症に対しては、あまり有効とは言えません(BMJ2015;350:h1225)。
また、例えばインフルエンザで40度の高熱の時に飲んでもらっても、体温はせいぜい1度くらいしか下がらないことも多いようです。 解熱鎮痛剤も使い分けが必要ですし、量の加減や使用頻度の調整など、細かいことを確認する必要はあります。
診療所便り 平成27年10月分より・・・・(2015.10.31up)