中性脂肪の治療 平成19年3月
「俺、健診で中性脂肪が高いって言われたけど、中性脂肪が怖くてメシが食えるかって。ガハハ。」のように、深刻味のない会話を耳にします。
中性脂肪が高くても普通は症状がありません。苦しくもなく、どこも痛くないはずです。
中性脂肪は代謝の状況を示す検査項目です。トリグリセリド、トリグリセライドなどと書いてあることもあります。中性脂肪の意味を簡単に言うと、食事を分解できていない時に高めになる傾向があるため、カロリーが適正かどうかの目安と言えます。
中性脂肪が高い人を統計で調べてみると、心筋梗塞を起こす危険性が高いのですが、BIPスタディという研究では薬で値を下げることにより梗塞が減ることが証明されました。ですから、血圧やコレステロールと同じように、薬物治療の指標の意味もあると考えたほうがよさそうです。
生まれつきの体質で高くなる人もおられますが、ほとんどの人は内臓脂肪が多い傾向があり、メタボリック シンドロームに相当する状態が疑われます。朝食前で150未満が標準値です。
ただし、食後に採血した時や前の日にアルコールを摂っている時は検査値が高めに出るので参考になりません。検査の前日の夕食は夜9時くらいまでには済ませ、夜間は水やお茶のようなカロリーのないものしか口に入れないようにし、検査の日は朝食を抜いて採血すると正確な値が分ります。
胃腸の機能が落ちた人は時に消化運動が極端に遅くなり、前日の食事が胃の中に残ってしまうことがありますが、当然このような人の場合は検査値が高くなります。
いつも晩酌していて、「本当の値がわかりませんから、今度は禁酒してみてください。」と言い続けて、とうとう禁酒できないままズルズルと経過し、倒れた人も結構おられます。
禁酒しない人は多いので、薬で治療して無理にでも下げたほうが良いのか、治療の意欲なしと考えて薬物治療は避けるべきなのか、いつも困ります。アルコールは代謝に負荷をかけますから、見かけだけ中性脂肪を下げて意味があるのか解りません。飲酒量が多い人に限った統計が出れば解るでしょう。
また、極端に高い人は急性膵炎を起こすこともあり、よりいっそう代謝機能が落ちて笑いごとでは済みませんから、高い人はカロリー制限(特に禁酒)が望まれます。そして現実的に自分にこれ以上の制限は無理だと思われたら、薬を使ってでも下げたほうが寿命を延ばすと考えられます。ベザフィブラート、フェノフィブラートが代表的な薬です。