SGLT2阻害剤
(SGLT2)糖尿病の新しい薬が発売されました。テレビや雑誌で宣伝されていますので、御存知の方も多いと思います。その薬はSGLT2という蛋白を阻害し尿に糖を排泄させ、血糖を下げます。
SGLT2という蛋白は尿を作る管にたくさん存在し、尿から糖分を再吸収し血液中に戻す働きをするそうです。これのおかげで、我々は大事な糖分を体に残せるわけです。これを適度に阻害できれば不要な糖分を尿の中に出し、血液中の糖分を低く保つことが可能です。
(良い点) この薬の良い点は、単独では低血糖が起こりにくい事、他の糖尿病の薬と作用機序が異なるので併用しやすいこと、膵臓に無理をかけないこと、体重が減ることなどです。旧来の糖尿病薬は、内蔵をフル稼働させて糖を下げるような働きがあり、膵臓を疲弊させる傾向がありましたから、SGLT2阻害剤は、より安全と考えていいでしょう。 少なくとも膵臓や肝臓に負担をかける作用の仕方ではないようです。 そもそも血液中の糖が多すぎることで合併症を生じますから、多い分を尿に出してしまおうという理屈は合理的です。
(困る点) いっぽうで困る点は、尿に多量の糖分が排泄され、尿路感染(膀胱炎など)や陰部感染症を誘発すること、尿量が増えて脱水になりやすいこと、腎臓に悪影響がないか懸念があることなどです。数十年という長期間にわたって生理的な量より多い尿糖が流れ続けた場合、効果が薄れて徐々に無効にならないのかも解りません。
ただ、もともと遺伝性に尿糖が続く方達でも特に健康を害するわけではないと言われていますから、持続的尿糖のことは気にしなくて良いのかもしれません。
元々腎機能に依存した機構に作用する関係で、この薬は腎機能が良くない人には使いにくいと思います。利尿剤を使う方、例えば心不全の方の場合、急激な脱水や尿細管障害が生じる危険性もないとは言い切れません。おそらく脱水の関係で夏場に減らす、冬場に増やすといった調整が必要と思いますが、そういった点は添付文書に記載されていないようです。
また、理由はよく知りませんが、皮膚に副作用が出る方がおられるようです。この系統の薬に独特なものか一般的なものかは分かりません。皮膚の症状が何か出たら、直ぐに主治医に知らせたほうが良いでしょう。
本来の目的と違って体重を減らす目的で使う人が出る可能性もあります。 開発は相当前からされていて、学会では20年くらい前から発表されていました。 海外では既に発売されて評価もされていますので、重大な副作用は出ないだろうと思いますが、併用する薬がある場合は、その調整に気をつける必要があります。
診療所便り 平成26年7月分より・・・・2014.07.31up