マグネシウム
マグネシウムは元素のひとつです。地球上の元素の12−13%を占めるほど多量に存在し、にがりなどにも含まれています。カルシウムより量的にはずっと多い物質です。かってはカメラのフラッシュにも使われたそうですが、今はキャンプ用の発火剤、また合金としていろんな機械、例えば車のエンジンなどにも使われています。エンジンが溶けないのか?と思いましたが、合金の場合は心配無用のようです。鉄だけで作るよりも軽量化され、燃費も良くなるそうです。
人体への影響
マグネシウムとカルシウムとは多少似た性質もあるようで、人体の中では骨の表面に多く存在するそうです。マグネシウムは人間に必須のミネラルと考えられています。体内で必要な多くの酵素の働きに必須と言われておりますが、あまりに多岐にわたるため、詳細については未解明の部分も多いようです。
下剤として
便が硬い人にはマグネシウムを含む薬が有効です。酸化マグネシウムやクエン酸マグネシウムという成分が下剤によく含まれています。機序を詳しくは知りませんが便の中に水分を貯める作用があり、飲んでみると確かに便が柔らかくなる傾向はあります。
人によっては腹が発酵するような感覚があり、不快に感じる場合もあるようです。使用する量の調節が必要で、多すぎればひどい下痢をきたし、ちょっと不足すれば便が出ないということもあります。
子癇の治療薬
子癇は妊娠高血圧の方に見られることがある発作ですが、この治療にマグネシウムを含む注射薬が使われます。子癇の患者さんが全員マグネシウム不足とは限らないと思いますが、筋肉や神経が過敏になった状態をマグネシウムが改善する効果があるようです。
他の薬との関係
マグネシウムで注意しないといけないことは、他の薬の吸収を阻害する可能性があることです。
特に有名なのは、抗菌剤のキノロン剤(タリビッド、クラビットなど)と同時に摂取した場合です。抗菌剤の働きが半分くらいまで落ちることもあるそうです。抗菌剤は十分な吸収がないと菌を殺すことができませんから、飲むタイミングを変えるか下剤をいったん中止するなどの対処が必要になります。
下剤として「カマグ、重質酸化マグネシウム、マグラックス、マグミット」などの表示がある薬をもらっている人が抗生物質、抗菌剤を処方された時は飲み合わせを確認する必要があります。
マグネシウム不足
普通の生活ができて食事も充分に摂れていれば簡単に不足するはずはないように思いますが、例えば心不全の患者さんは利尿剤を長期に飲んでもらうので、排泄が増える関係で不足する傾向があります。
腸の病気で長く下痢が続いた場合や、アル中の人でも同様です。不足した場合の症状は様々で、めまいや倦怠感だけの時もあります。このような不定の訴えの時は私も見分ける自信はありません。不整脈が発生したため検査し、初めて気がつく程度です。
極端に不足すると不整脈や狭心症を始めとして、病気を起こしやすくなります。体内のマグネシウム量の判定は血液でしますが、確定のために、不整脈や原因不明の意識障害の患者さんの場合は尿を溜めて検査する必要があります。
マグネシウム中毒
医薬品として使われる酸化マグネシウムは腸管から大量に吸収されるものではなく、ほとんどは便といっしょに排泄されるはずですが、微妙に吸収されて稀には中毒になりますので、本当は定期的な血液検査が必要です(忘れている先生がほとんどです)。
私が経験したことがあるのは高齢者だけです。大量に使われていたわけではないのですが、血液検査をしてみると許容量を越えていました。ただし、その方たちも症状は全くなく、特に害が起こっている様子はありませんでした。
腎機能が正常の人では、めったに中毒は出ないと思います。でも薬用でない「ニガリ」や何かのサプリメントの場合は、摂取される量や吸収量が違うかもしれませんので、もしかすると中毒を起こすかもしれません。
中毒では初期には倦怠感や脱力などが出て、ひどい場合は死亡することもあるようです。
平成22年4月30日 診療所便りより 橋本泰嘉 (2011.08.23up)
マグネシウムの補給?